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小説X
七夕さま(パラレル)
※中学生ローガンと幼稚園児ローグ。





星が集まり、大河を描いている様子はいつ見ても圧巻である。

「おりひめさまとひこぼしさま、あえたかなぁ?」

俺の右手にくるまれた小さな左手の先がぴょんぴょんと跳ねる。
そのたびにフリルをあしらったワンピースのすそが揺れて、金魚の尾びれのようだと感じてしまう。

「ローグ、心配しなくても、今日は天気がいいからちゃんと会えたよ。」

「ローガン、ほんとう?」

「ああ、だからこうやって外で天の川を見ているんだろ。」

言葉を切ると、膝元より下にある彼女の目が真ん丸になって喜びを表した。

「よかった!あえなかったらかわいそうだもん。」

無邪気な優しさに満ちたその言葉に、胸がつきりと痛む。

今年の卒園式で、ローグが密かに想いを寄せていたボビーという子が小学校に上がった。
そのため、会う回数も限られるようになり、内心寂しい想いをしているらしい。

そんなことを考えると哀しくなってキリがないので、話題を変える。


「ローグ、短冊に何をお願いしたんだ?」
「んーとね、ボビーといっぱいあそべますように!って。」

…しまった。ますます切なくなってしまった。
俺は一瞬、苦い顔をして見せたが、一番辛い筈の本人は相変わらずにこにこと笑っている。
ため息を着くと、向こうから「おーい。」と間延びした声が聞こえた。
 振り向けば、町で一番大きな高校の制服を纏った巨体が此方へ向かってくる。

「ヴィクター…。」
「ずいぶんと冴えない面しているな、弟よ。」

ヴィクターが屈んでローグに挨拶をすると、その背後から飛び出してくる影があった。

ボビーだ。
「ローグ、おひさしぶり!」
「ボビー!こんばんは!」

久しぶりの再会を遂げたチビどもは、きゃーきゃーとはしゃぎながら、俺たちの足下を駆けている。
その間に、おれはヴィクターをちらりと見上げる。
今日は星がとても綺麗だし、七夕だから天体観測にでも連れてやったのだろう。

「しかし、こんな上手いことあるか?」
「何がだ?」

首を傾げるヴィクターをよそに、俺は空を見上げた。

恐らく、小さな二人の再会を祝福しているのだろう。
夏の大三角形のうち、ベガとアルタイルが、一層輝いたのは、気のせいではないはずだ。








パラレル!
お兄ちゃん初登場ですね。

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あきゅろす。
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