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葉月珪(桜)


走り出したくなるような暖かい風
青い空と白い雲
少し浮かんだ灰色の雲は前日の重い曇った空を思わせた。


はばたき学園2年。
篠原菜由。
春休みなんて短くて休みなんて感じさせないがやはり始まりというだけあって気分は清々しい。
玄関で少しくすんだ靴を履いて軽く地面を蹴る。
制服も特に新しいものでもないし、鞄も所々すり減っている。新しいものなんて全くない、またいつもの生活が始まるんだ。

ただ、少し違うと言うなら…


「おはよう!」
「おはよう。」


扉の向こうに彼がいるということ。

「今日晴れて良かったね。」
「そうだな。」
「桜も咲いたし、空も綺麗だし、今年の新入生も幸せだね?」
「も…?」
「うん。入学式に私たちがあったみたいじゃない?」
「ああ…そういうことか…。」

笑いまじりに告げると、私とは対称にどこかに煮え切らない彼。葉月珪。
不思議に思って学校に続く道を歩く彼の横顔を眺めた。
じっと見られていることに気付けば居心地が悪いのか「あぁ」とか「ん…」とかもごもごしている。核心を聞きたいと見ていたが、この姿を眺めていられるならこのままでも良いかも。

「その…俺は…」
「…ん?」

呟く彼は少し遠くを見ているようだ。しかし、良い辛いのか目が泳いでいる。長い睫毛を揺らしていた。

暖かい風がふわりと桜の香りを運んできた。
ああ、彼が見てるのはあそこにあった桜だったのか。
先日森林公園に行ったと時よりも開いているが、まだ八分咲きで満開が楽しみになる。

「俺は…今の方が」
「え…?」

立ち止まった珪くんにあわせ、立ち止まって1っ歩先に出た分振り返る。
きゅっと結んだ唇。
伏せがちな瞳。
ただ、違うのは私のことを正面から見ているということ。



「俺は…入学式の時より、今の方が…ずっと幸せだ。」



世界の全ての音が消えたみたいで
時間が止まったみたいで
彼が瞬きするのも魔法がかかっているみたい。


珪くんが私の隣をスッと歩き抜けるのを感じた。
そのとき、
右手に引かれる感覚。

「学校、遅れるぞ。」
「…うん。」

私の右手と珪くんの左手が繋がる。
俯いたままの私の視界に桜の花びらが舞う。
上を見上げるとさっき見た桜。

そして

飛び切りの笑顔の彼。

笑顔を返せばより一層綻ぶ笑顔。




桜が舞う季節

世界がキラキラ


始まりを呼ぶ花









名前変換の意味がなくですいませんm(_ _)m
久しぶりに書いた小説にドキドキ。
こんなに短いのに時間かかったとか口が裂けても言えない。


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