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死神、出会う


草木も眠る丑三つ時。先ほどまで飲んでいた酒にとうとう呑まれ、意識が朦朧とする。溜まりに溜まったストレスを吐き出したくて酒を手にしてみたが、まさかここまで酔うとは。こんな時に敵襲なんざ来たら敵わねぇだろうな、と野暮なことを心の隅で思いながら、そんな自分に自嘲した。

次第に眠気に襲われ、瞼が完全に閉じる。布団が恋しいが、布団を敷くという動作を想像しただけで面倒くせぇ。そんな中、なにやらただならぬ気配を肌で感じ、融通の効かない身体に鞭を打って神経を研ぎ澄ます。

(…なにかいる)

自分の回りをペタペタと歩き、視線が痛いほど突き刺さる。今までの経験からしてこの気配…人ではなさそうだ。忍、いや天人か?
まぁ、俺の部屋に何かがいることには違いはない。どっから湧き出たか知らねぇが、斬らせてもらうぜ。

気配が俺の真横に集まったことを五感で確認し、目を開けたと同時に"気配がする者"を畳に組み敷く。反射的に懐に入れてある短刀を取り出し、喉元を目掛けて腕を振り落とそうとしたが、目に映った相手の姿に俺の手はピタリと止まった。

「…ガキ?」

組み敷いたのは、てっきり俺を狙った天人だと思っていた。だが俺の下にいるのは、漆黒のローブを身に纏ったまだあどけなさの残る少女。互いにポカンと見つめ合い、ただ部屋に沈黙が流れ、時が止まる。
しかしものの数秒後、何かが途切れたように暴れ出した少女のおかげで、時はまた流れ始めた。


「…う、うぎゃあああ!お前まだ寝てなかったのか!」

「テメェ何者だ。どっから入って来やがった」

「ひやぁぁぁ顔近い近い!イケメンンン!」


短刀を喉元に宛てがい少女に顔を近づけると、少女は頬を赤く染めながら訳の分からないことを口にする。…コイツ、本当に敵か?さっきまでの異様な気配が嘘のように感じられない。つうか俺の質問全くの無視か。

急にバカバカしくなり、短刀を懐に終う。今もなお恥ずかしそうに首を大振りする少女はおそらく無害(バカ)だろう。まぁしかし油断は大敵だ、一応武器の確認だけしとくか。


「うひゃっ、ちょ、どこ触っているのだ!エロ、変態!」

「うるせぇなァ。んな貧しい乳触ったうちに入らねぇよ。オラ、武器出せ武器を」

「ちょ、おま、なんかエスカレートしてね?下着の中に武器なんか隠すわけないだろうが!わぁぁもう触んなぁぁ…!」



死神、出会う


END
20100123





あきゅろす。
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