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安らぐ一時を下さい



無造作な黒髪、
鋭い目つき、
筋肉質な身体、

殺人的な色気を放つ彼に、私は今日もくぎづけです。



午前6時。日が昇り始めた頃、私は珍しく稽古場に居た。稽古場からは竹刀を振る音だけが空間を支配していて、思わず緊張が走る。

勿論私が稽古をしているのではなく、しているのは私の想い人である土方さん。ずっと前に、土方さんが朝早くに稽古をしていると隊士さんに聞いて来てみたのだが、

居た、本当に居たよ土方さんっ!早く起きてよかったァァ!



『土方さん今日もかっこいいな。…うぁ〜、やばい。好き過ぎる!!』

「土方さんエロいな。私を襲ってくれないかなぁ」

『そうそう。あの包容力で私を……って沖田さんッ!?』


こっそり土方さんを観察していたところ、いつの間にか後ろに居た沖田さんに驚き奇声を上げる。

まずい、よりによって沖田さんに乙女のぼやきを聞かれてしまった!よりによって沖田さんにっ…!てか何で寝坊ばっかの沖田さんが居るわけ?今日に限って起きるの早いなオイ!


「覗き見ですかィ?ついに第二の近藤誕生だ」

『な、何言ってんですか!私は、その…ゴキブリの駆除に来ただけです、ゴキブリの駆除に!』

「土方さん今日もかっこいいなー、名前抱かれたーい『ギャアアア…!!』


沖田さんを騙せることは当然のことながら出来ず、私は沖田さんの言葉を必死に遮る。もしこんな事を土方さんに聞かれたりなんかしたら、私もう真選組やってけない…!

てかその前に…
私が土方さん好きってこと、沖田さんにバレちゃったよ。どーすんの。え、マジでどーすんの名前!


「おい、お前ら何やってんだ?こんな朝早くに珍しいな」


そんなピンチの時に限って神様は私を裏切る。

爽やかな汗をタオルで拭いながら、現在進行形で近づいてくる土方さん。あはん、出来れば私がタオルを差し出したかった!
…じゃないよ私!隣から異様な空気を感じ首をギギギと動かしながら横を向くと、沖田さんはどす黒い笑みで私を見下ろしていた。

ギャアアア…!絶対この人良からぬことを考えてるよ!なに、なにすんの!?まさか土方さんにバラしたりしないよね。しないよねッ!?神様のバカァァァ!



「土方さん、今日も朝稽古ですかィ?ほんと懲りねー野郎だな」


やめて沖田さーん!これ以上土方さんに話かけないでェェェ!


「いや、俺悪いことしてねーし!ていうかお前、こんな朝早くに何やってんだ?」


…アレ?


「俺はちょいと早く起きちまっただけでさァ。名前は知らねーけど」


……アレェェェ!?
何で普通の会話交わしてんの?沖田さんのことだから、面白がって土方さんにバラすと思ってたんだけど…。予想外デス。
と、取りあえず変なことに巻き込まれる前に退散しておこう。


『あの、私は通りすがりの通行人ですので退散しますね。それではおやすみなさい』

「何言ってんだお前。もうすぐ朝飯だぞ」

「マジですかィ?もうそんな時間か。土方さん、他の野郎が来る前にとっとと行きやしょうぜ」

「そうだな。ほら、名前も意味分かんねーこと言ってねぇで食堂行くぞ」

『あ、はいっ!』


土方さんの誘いに、あっさり首を縦に振ってしまった私。何やってんの名前!これは罠よ、罠!ここで着いて行けば沖田さんの思うツボ。土方さん絡みのことでからかわれるに違いない。
でも…土方さんと朝ごはんだなんて週に3回あるかないか。1回でも機会を逃してみろ、その日一日死人みたいな顔で過ごさなきゃならないぞ。


「名前、なにボーっとしてんだ。早く行くぞ」


土方さんに頭を軽く叩かれ、思考を停止させる。私が云々考えていた時に着替えたのだろうか、土方さんは黒い制服に身を包んでいた。いつ見ても飽きないです、土方さんっ!





◆ ◆ ◆


いつもより少し早く食堂に着くと、案の定他の隊士さんはあまり来ていなかった。

おばちゃんに注文を済ませ席に着くと、沖田さんがニヤリと笑いながら隣にどすっと座った。
やばい、土方さんに夢中になりすぎて沖田さんのこと忘れてた!
急いで周りを見渡し土方さんが私達を見ていないか確認する。生憎土方さんは他の隊士さんと喋っていて、安堵のため息が口から零れる。


「随分必死だねぇ。もうとっくに俺にはバレてるってのに」

『…そりゃあ必死にもなりますよ。バレたのが沖田さんだもの…』

「しかし名前が土方さんをねぇ〜」


遠くを見据えながら口角を上げる沖田さんは、何か面白い事を思い付いたに違いない。その証に身体がブルブル震えてますよ、私。


「名前、今日のミッション考えたぜィ」


ほらね……、キタでしょ?でも、ここまできたら後戻り出来ない。ミッションを断った暁には酷い仕打ちが待っているのに違いはないのだから。大人しく内容だけでも聞いておこう。


『あの、ミッションって…なんですか?』


「《土方、ついに部下に襲われる。部下決死の夜這いでチョメチョメ》なんてどうですかィ?早速今日の夜実行でさァ」


それを聞いた瞬間、私は机に突っ伏した。なんだよソレ!私に夜這いやれってか!?嫌われろってか!?真選組やめろってか!?大体チョメチョメって古いよ!てか無理、チョメチョメとか無理だから!


「あ、因みにしくじったらラブホで撮ったあの写真ばらまくから覚悟しとけよー」



あぁもう…嫌ァァァ!




安らぐ一時を下さい



「名前たんっ、そんな泣きそうな顔でどうしたでござるか?」

『あ、土方さん。実は沖田さんが……。ってあれ?土方さん、さっき何て言いました?』


「名前たん、…大丈夫でござるか?」


『名前たんっ!?』



END
20090414
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あれれ、トッシー登場か!?次回のミッションはどうなるのか!?






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