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手のかかる子ほど可愛い



ホワイトスクリーン。それが今現在の私の脳内。やばいとかやばいとかやばいとかそういう問題ではない。何も考えることが出来ず思考回路が完全に封鎖されてしまったのだ。


「おい総悟…テメェなにやってやがる」

「なんですかィ、その言い草は。それはこっちの台詞でさァ。王子捕まえてやろーと来てやったのに淫乱行為たァ不謹慎きわまりないですぜ」

『お、沖田さん!これは事故です、事故!』

「へぇ〜、これが事故ねェ」

『「ぐえっ!」』


黒い笑みを浮かべた沖田さんは、土方さんの背中に足を押し付け、密着していた私達の身体を更に密着させる。その勢いで土方さんの手が私の胸に触れ、身体がぴしりと凍り付いた。


『ぎゃほおおぉお!胸っ、土方さんっ、胸ェェ!』

「ぎゃほおおぉお!!総悟ォォ…!テメェ悪ふざけはいい加減にしろォォ!」

「ん〜、あのAV女優は駄目だ。全然調教されてねェ」

『「人の話を聞けェェ!」』


土方さんの背中に足を押し付けたまま器用にAVを見る沖田さんに軽く殺意を感じる。…が、それよりも土方さんの方に意識が集中してしまう。現在進行形で胸の上に置いている手を退けて欲しい!相手が大好きな土方さんなのは嬉しいが大好きな土方さんだからこそ退けて欲しい。こんなことになるんだったらこの貧相な胸をボインにしておくんだった。…ってそういう問題じゃない!え、でも胸ってどうやって大きくするの?確か好きな人に揉んでもらうんじゃなかったっけ?てことは…土方さんんん!?私土方さんに触られてるじゃんんん!!


『ジンギスカン!』

「お、オイ名前!気絶すんじゃねェェ!」

「土方さん、気絶させる程何やったんですかィ?ナニか」

「オメェは黙ってろォォ!」






◆ ◆ ◆



パチリ。

身体に感じる温かな体温。ゆさゆさと心地良い揺れを感じながら重い瞼をゆっくり上げると、微かに香る煙草の匂いが私の鼻を擽った。私…この人知ってる。


「おっ、名前。やっとお目覚めかィ?」


直ぐ傍で声が聞こえ、ぼやけた人物に焦点を合わすと、そこには棒アイスをくわえた沖田さんの姿が。


『あ、れ…沖田さん?』


隣を歩く沖田さんはいつものようにかわいらしい笑みを浮かべて私に笑いかける。…その笑顔の裏が怖いんだけどね。というか私って沖田さんより身長高かったっけ?てか私足動かしてないのに何で進んでんの?そんな小さな疑問を抱き沖田さんから視線を前に移すと、そこには全身真っ黒の男が私をおぶり沖田さんの隣を歩いていた。


『ひっ、土方さん!?』

「やっと目ェ覚ましたか。寝過ぎなんだよお前は」


前を向いていた土方さんの顔がこちらを向き、バチリと目が合う。…が、恥ずかしかったので土方さんの頭を両手で動かし無理矢理前へ向かす。そうか、あの煙草の匂いは土方さんだったんだ。よだれとか垂らしてないよね…?


『てかなんで私土方さんにおぶられてるんですか?』

「…お前が気絶したまま起きねーから仕方なくおぶってやってんだよ」

『気絶…?あ!!』


記憶を辿らなくても直ぐに思い出した。私…土方さんに胸触られて気絶したんだった!あの強烈なシーンが脳内を駆け巡り赤面する私を見て、沖田さんはお腹を抱えて高らかに笑う。


「アハハハハ、あれは傑作でさァ。あれも写メればよかった」

『お、沖田さん何してくれたんですか!あんなこと作戦してなかったじゃないですか!』

「いいかィ名前、作戦ってのはTPOで決まるんでィ。まァ明日にでも手取り足取り教えてやるから安心しな」

『…沖田さん(きゅん)』

「オィィィ!何お前頬赤らめてんだよ!てか作戦って何ィィ!?」

「ほら名前、ミッション成功のご褒美にこの棒アイスでもやるよ。しっかり奉仕しなァ」

『…んぐっ』

「名前ちゃんんん!?」


沖田さんに無理矢理突っ込まれた棒アイスを土方さんが口から引き抜き地面に叩き付ける。あーあ、アイスがボロボロ。


『あー、勿体ない!』

「勿体ないじゃねーよ!お前何されたか分かってんのか!?」

「ナニ考えてんですかィ土方さん。いや、エロ方さん」

『ナニ考えてんのエロ方さん。いや、十さん』

「テメェら分かってやってんだろ…!てか十さんって何だよ十さんって!俺はお前の父ちゃんか!」

『十四郎の十を取って十さん。エロ方さんの方がよかったですか?』

「いい訳ねェだろ!」


今土方さんの瞳孔めっちゃ開いてんだろーなと想像しながら沖田さんと爆笑する私。今日は色んな事があったけど、なんだかんだで楽しかったな。…あれ、今日何があったんだっけ?大事なこと忘れてるような…


『あァァアァ!王子様!』


すっかり忘れていた。今日珍しく土方さんと居るのも王子様を捕獲する為だったんだ!


『ひ、土方さんっ!王子様はどうなったんですか!?』

「王子なら俺達が捕まえる前に総悟が片付けたらしい。今は屯所に居る頃なんじゃねーの?」

「土方さんもまだまだですねィ。バズーカ使えば一発でさァ」


沖田さんの不敵な笑みに溜息をつく土方さんだったが、何はともあれ王子様が無事でよかった。沖田さんも仕事サボってた訳じゃないんだな。


「それから土方さん、これから俺に逆らうと痛い目に会いますぜ」

「あァ?何言ってんだよ」

「てれれれってれー、暴ぉ行ぉ写真んん」


あたかもドラ●もんのように携帯を取り出した沖田さんは、携帯の画面を土方さんの前に差し出す。何かあるのかと気になった私も、土方さんの肩に顎を乗せ画面を見る。


『「ギャッホォォオォ!!」』


第一声は叫び声だった。ディスプレイに映されていた写真は、ラブホで沖田さんに撮られたあの写真。


『沖田さん…その写真他の隊士さんに見せるつもりじゃないでしょうね!』

「なにそんなに怒ってんだィ?怒られるのは俺じゃなくて名前の胸揉んだ土方だろィ?」

「なっ…!?あ、あれは総悟のせいだろーが!」

『…そ、そういえばその事で土方さんに謝ってもらってない』

「あーあーあー、土方さんは人に罪をなすりつける最悪な奴だァ」

『土方最低、死ねばいいのに』

「お前らなァ…いい加減にしやがれ!」

『ぎゃほっ!』


私をおぶる為に足に回されていた土方さんの腕がスルリと離され、必然的に土方さんにしがみつく形になる。それでも地面に落ちないようにと必死にしがみついているのに、土方さんは新しい煙草に火をつけ悠長に煙を吸う。


『土方ァァ!早く私を支えろォォオォ!』

「んなことして堪るか。上司の名前もまともに呼べねー奴には仕置きだ」

「またまたそんな事言って土方さんは。本当は背中に当たる胸の感触を味わってるくせに〜」

『せ、セクハラ上司ィィ!』

「誰がセクハラ上司だこの貧乳!」

「土方さん、なんで名前が貧乳だってこと知ってるんですかィ?」

『やっぱりあれは事故と見せかけた強姦だったんだ…』

「誰かこいつら殺してェェ!」




手のかかる子ほど可愛い




…2時間後、屯所にて…


「名前」

『ひ、土方さん!』

「今日は…色々と悪かった。詫びと言ってはなんだが、コレお前にやるよ」

『え、私にですか?…ってマヨネーズゥゥゥ!?』



END
20090310
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補足⇒土方さん結構反省してます。てかかなり(笑)同様にヒロインちゃんも反省してます。沖田はそんな2人が面白くて仕方がない。





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