05.犯してはならない罪 踵を返してゆっくりと、その場を離れて心の中で何度も何度もごめんね、とありがとう、を口にした。 ゆっくり歩いた筈なのに足は勝手に走り出していて、気付いた時には学校を見つける事が出来ない距離にいた。 上下する肩を、乱れた息を整えポケットに無造作に突っ込んだ写真を取り出す。 「ご、ごめんね…先生。」 罪悪感だけが私を支配する。 当たり前だ、許可もなく持って来たのだから。 それでも、それでも。 私はこれが…、先生とを繋ぐ何かが欲しかった。 私が初めて『阿部隆也』という人に出会って、恋心を抱いた年と同じ頃。 先生と彼女は同じ時間を共有して、今後も人生を共にする。 その人に敵うはずなどないけど。 これくらいは、写真の中で幸せそうに過ごす先生くらいは私に欲しい、貰ってもいいと。 それくらいは許される筈だ、と。 そう自分に言い訳してみるも、勝手に人の物を持ち出した事には変わりなくて。行き着く答えはやはり謝罪の一言だけで。 「ごめん先生…」 謝罪の言葉も空々しく、私はただその場に立ち尽くして写真を抱き締めて泣いていた。 本当に、どうしようもなく。 どうしようもなく、私はこれが欲しかった。 あの頃の子供の独占欲が、今また私を動き出させた。 ★:)next... |