04.果てしない空虚感 全部が思い出になってしまうのかな。 私は過去の人になってしまうのかな。 先生の彼女はどうして平気なんだろう? 先生の側で泣いたり、笑ったり出来ずに、離れた場所でただ確証もなく待ち続けるだけの毎日。 私が彼女ならきっと、絶対、我慢出来ない。 それとも、それだけ長い時間を過ごした二人にとっては問題ない、それくらい二人の絆は深くて確かなものなのだろうか。 そんな事じゃ、揺るがない…と。 (…でも、私と先生だって) さっきの写真を見た所為でそんな事ばかり考えてしまう。 思考はぐるぐる駆け巡るものの、結局は先生と彼女の問題であって。私は関係ないのだから。 無関係だと分かってはいるのに、私は不毛な思いに囚われていた。 「…平気なわけねぇよ、」 「………えっ…?」 ぼんやりしていた。 だから分からなかった。 いつもなら罵声ばかりで攻め立てる先生の、今の言葉の真意が見えなくて。 だけど聞き返そうとする前に先生は立ち上がって「職員会議あっから、」と教師の顔で私を制する。 先生らしくない言動に私の頭はついていけず、言われるがままにバタバタと荷物を鞄に詰め込んだ。 窓枠に手を掛けて「さようなら、」と口にするといつも通りのやる気のない返事と視線が返ってくる。 他に何も言えなくて振り返らないままにその場から離れた。 「…平気なわけねぇよ、」 私は何も聞いてない、聞いてないんだ。 そんな言葉は知らない、だから誤解なんかしちゃ駄目なんだ。そうに決まってる。 家路に向かいながらも何度となく同じ言葉が私の中を支配して、離れない。 あの言葉は、彼女に向けられたものだ。彼女と別れる事に平気じゃない、そういう意味なんだよ。 私に言われたから何なの、頭では疑問だけが駆け巡るも、そうじゃないと困る。 だって…、だって私は、 もしかして私と、私と離れる事に先生は平気じゃないんだ、 そう言われたのだと錯覚してしまったから。 「…馬鹿じゃねぇの?」 先生の口調を真似てみる。 そしたらそれが何だか妙におかしくて。 笑いが込み上げてきた。 笑えて、笑えて。 涙まで出てきて仕方なかった。 ★:)next... |