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08.高鳴る胸と期待の影


約束の時間にぴったり行ったというのにもう皆集まっていた。
駅前にリニューアルオープンした洋風居酒屋、正直リニューアル前にすら来た事ないのが本音だけれど。まぁまぁ値の張るお店。
敷居が高いなぁ、と前々から思ってはいたけど店内はそう堅苦しくもなくてほっ、と一安心した。

入り組んだ店内の奥へと進むとよく見る顔触れと、初対面の人達にやはり漏れるのはため息だけで。

「…あ、遅れてごめん。」
「いーよいーよ!まっ、座りなよ」
「**名前**、何飲む?」
「あー…カシス以外なら何でも」

適当に挨拶を済ませて席へとつくと真っ先に聞かれるのは名前と年齢、そして彼氏の有無。あからさまな質問のバリエーションに来るんじゃなかった、と今更ながらに後悔する。
ごめんね、と小さく友人に謝ると「こっちこそ無理言ってごめん」と謝り返されリアクションに困った。
怒ってる訳でもないし、むしろ感謝したい。心配掛けてばかりで私の事を思って呼んでくれた事も分かっているから。

「**名前**ちゃんカシス駄目なの?」

唐突に話を振られて困惑していると「あ、ごめんごめん…」と今更ながらに自己紹介をされて笑ってしまった。

「うーん、駄目って言うか…あんま好きじゃないんだよね。あの甘ったるい感じとか」
「確かに甘いけど。女の子ってだいたい好きだよね?」
「だってご飯食べるのにあんなの飲むなんて…私には無…」

言い終える前に隣にいた友人から鉄拳が飛んできた。友人の手にあるグラスには間違いなく私が無理だと言おうとしていた類の物で。

「んー…何かごめん」

堪えていた笑いも口が開くと同時に抑え切れなくなって肩を揺らして笑うと友人が安心したような笑顔を見せてくれて、釣られて私もまた笑った。









「…**名前**ちゃんは?」

好き勝手に頼んだ食べ物に箸を付けていると唐突に名前を呼ばれた。
視線をそちらへと向けるとどうやら連絡先云々の話で。正直、言葉に詰まった。
別に悪くはないけれど、自分から教えるというのはどうも苦手なのが私の性というやつで。つまりは聞かれたら教える、が私なわけで。







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