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椎名 昴
Prince kiss2



「美乃里…?」

教室でチハルと夏菜と目が合った瞬間、彼女たちがジリジリと詰め寄ってきた。


「アンタ昨日、1番のイケメンと姿消したね!?」


さすが夏菜…!
椎名くん目立ってなかったけど、ちゃんとチェック済みだったのね!
…と思いながら、夏菜に胸ぐらを掴まれる。


「美乃里もやるな〜。で、どうだった?」

「…どうだった……って?」

「いやん!初★体験の話!」

「は?」



私は訳がわからないと言わんばかりに口を開けると、チハルと夏菜が互いに目を合わせた。
「この子、人生最大のチャンスを、手に入れてない…?」
「そうね、この子人生最大のミスだわ」

2人はうわ言のように呟く。


「何よ。雰囲気に慣れれなくて、一緒に帰っただけだもん!」




そのあと、「お前は俺の婚約者だ」って言われたことは…伏せた方がいいよね?

だいたい非現実すぎるし、彼も冗談だったに違いないから。


「マジで!?」
「嘘つかないでよ!」


え?待って?
なんで私が嘘つくの!?


「あんなに熱い視線送られててー、美乃里気づいてなかったの!?」
「熱い、視線?」
「うん、あのイケメン、ずっと美乃里見てた」
「え!?」

私が驚きの声を上げると同時に、そういえば昨晩「ずっと見てた」って言っていたのを思い出す。
あれ、本当だったの?

「まるで獲物を狙う狼のようだったよ〜。だからてっきりしちゃったのかと」
夏菜がダイレクトにそんなことを言う。
「…ち、ちが、本当に何もないから!」
「ちぇ〜」
「ちぇって何?チハル!」

顔を真っ赤にして2人を見る。
本当に何もなかったんだ!…婚約者の話以外は。













6時間目のチャイムが鳴り、今日の授業が全て終わった。
クラスが喧騒に包まれて、夏菜が伸びをしながらあくびする。
あとはホームルームが終われば、放課後だ。
けれど窓の外を覗いた女子が、他のみんなを手招きした。


「ねぇ!すごい車が止まってる!」
夏菜がその言葉を聞いて、即座に席を立ち上がった。
そして窓の外を見たあと、私を見てニヤリッと笑う。
「来たよ、彼」
私も窓に駆け寄って、校門の前に停まっている黒のリムジンを見た。
あれは確か昨日乗せてもらった、椎名くんのリムジンだ。
「あんな長い車初めて見た」
チハルが私の横で頬杖をついて、車を見下ろしている。
「な、なんで…!」
私は思わず顔を真っ赤にして、教室を飛び出していた。




階段を勢いよく駆け下りると、玄関から内履きのまま校門へ向けて飛び出していた。
背中に教室のみんなの視線を受けて、リムジンへと駆ける。
息を切らせてリムジンへ駆け寄ると、リムジンの後部座席の窓が下がった。
案の定、窓からは彼。


「ちょ、ちょっと、これ…どういうこと!?」
肩で息をしながら彼に問うと、彼はかすかに笑って答える。
「一緒に帰ろうと思って」
呆気にとられてその姿を見ていると、昨日のスーツの男性がリムジンのドアを開けた。
乗れ…ということか。
「ま、まだ、学校も終わってないし…」
乗るのをためらっていると、彼が身を乗り出して私の手首を掴んで引き入れた。
「構わない。行こう」
「ちょ、ちょっと!」


柔らかなシートに飛び込んだ私は、そのまま勢い余って彼の胸に頭をうずめた。
かすかな上品な香り。
変なの、イヤミとしか受け取れないその香りが、嫌いじゃない。

スーツの男性…佐藤さんが運転席へ回りこみ、車を発進させる。
椎名くんは何のためらいもなく、私の肩を抱いた。

「ちょ、離して…!」
彼の胸を両手で力いっぱい押す。
けれど彼にその力は敵わず、彼は私の前髪をかきあげて、額にキスをした。


「な、ななななななな」
真っ赤になって彼を見上げると、彼は満足げに前を見た。
「な、何してんのよ!」
彼を引きはがし、窓の外を眺める。
めいっぱい彼から離れ、身を守るように腕組みをした。






彼のこのペースについていけない。
どうしよう。
私のスクールライフにまで、彼は入ってきた。




触れた頬が、熱い。









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