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何度でも、変わらぬ答えを(R18)
※英二が『記憶』を取り戻した後、二人きりの短いアパート生活での初夜。


********



光の中で君が僕を呼んだ。

「英二…」

温かくて、優しい手のひらの感触。

「愛してる」

暗い意識の底から救い出され、僕は最愛の人を思い出せた。







アッシュは可能な限りずっと僕のそばにいて、僕に触れていた。触れられる度にアッシュから『記憶』が流れ込む。その情報量があまりに多くて少し頭痛がしたが、でもそんな事を言ってアッシュに気を遣わせたくはなかった。

『記憶』が戻ってから、マックスとジェシカや、シンやアレックス達に会った。皆僕が謎の昏睡状態に陥った後に心神喪失状態になったという事で、すごく心配してくれていた。
シンとマックスと伊部さんには、僕の『繰り返し』の事をアッシュが説明していた。三人とも信じてくれたという事実がすごく嬉しかった。
皆に無事を報告している時も、アッシュは僕のそばから離れなかった。アレックス達と話している時も、僕の腰を抱いたままだった。恥ずかしいからやめて、と何度か言ったけど「気にすんな」の一言で流されてしまう。僕が本気で嫌がってないと分かっているからだろう。でも、リンクスの皆の生温かい視線がどうしても気になった。


ショーターは張大に、伊部さんはチャーリーの所に戻ったので、アパートは僕とアッシュの二人きりだった。

夕食を終え、アッシュと並んでリビングのソファに座る。アッシュの肩に頭を乗せると、アッシュは当然のように僕の額にキスをした。流れ込んで来る『記憶』を眺め、アッシュを見上げる。何だかいつもより緑色が濃い気がする。僕がアッシュの瞳をまじまじと見ていると、アッシュが僕の腰に手を回した。引き寄せられ、アッシュと向き合う形で膝の上に乗せられる。そのままギュッと抱きしめられた。
耳元に熱い吐息を感じ、背筋がゾクゾクする。顔に熱が集まり、指先が少し痺れるような感覚があった。

「…日本の…家族のこと、思い出したか…?」

アッシュに聞かれ、僕は小さく首を振った。

「まだ…分かんない」
「そっか…」

ちゅ、ちゅ、と軽い音を立てて、耳と頬にキスが落とされる。
日本の家族の事を思い出したら、僕は伊部さんと帰国することになっていた。流石に、家族の記憶がないまま家には帰れない。
僕が思い出すのは日本の事よりもアッシュと過ごした日々の事ばかりだった。アッシュの存在が、僕の中で何よりも大きいからだろう。
もっとアッシュと触れ合えば、そのうち絶対に日本の事も思い出せる。そう確信していたから、不安はなかった。
今はそれよりも、もっとアッシュと一緒にいたい。もっとアッシュに触れていたい。

「ね、アッシュ…」
「ん?」

きっとこの時の僕は頭の中がとけてしまっていたのだろう。アッシュに撫でられて、抱きしめられて、キスされて、「愛している」と言われて、舞い上がっていた。
だから…―。

「…もっと、触って…?」

こんな恥ずかしいことが言えたんだ。

アッシュがわずかに目を見開く。そして、噛みつくようにキスされた。キスの勢いのまま、僕の体は後ろに倒れる。ソファのクッションに柔らかく受け止められ、僕は一瞬でアッシュに組み敷かれた。熱い舌に唇を割られ、全てを絡めとられる。涙でぼやける視界の中、それでもアッシュを見ていたくて僕は目を開いた。
間近に光る緑の瞳は、今まで見たことのない色をしていた。それに、心臓を掴まれる。アッシュは何度も角度を変え、僕の唇を貪った。まさに肉食獣の捕食。食われている、と思った。しかし恐怖はなく、かわりに快感と興奮が体の熱を上昇させる。

「英二、えいじ…もっと、触りたい…!」

獣の光を目に宿しているというのに、アッシュは幼い子どものように僕にすがりつく。胸の痛みを覚えながらも、僕はアッシュの髪を撫でた。
「いいよ」と耳元で囁くと、アッシュの手のひらが僕のシャツの中に入って来た。湿った肌を直接撫でられ、びくびくと体が震える。どうしてアッシュに触れられる所は全部気持ちよく感じてしまうのだろう。不思議でならない。もっと直接触れ合いたい。その欲求がむくむくと膨れ上がり、僕はアッシュのシャツのボタンに手を伸ばした。
互いに夢中になって服を脱がせ合う。指先が痺れているせいでなかなか時間がかかった。アッシュは服を脱がせ合っている時もキスを止めなかった。甘い快感と喜びと、脳内に流れ込んで来る『記憶』に翻弄され、僕は自分がどこにいるかもよく分からなくなってきた。
脱いだ服を床に投げ捨て、素肌を合わせる。ピッタリと合わさった胸から鼓動が伝わる。アッシュが生きてる。僕も生きてる。それだけのことが、嬉しくてたまらない。
体に溜まった熱は下半身に集中していた。硬くなったペニスにアッシュの手が触れる。僕もアッシュのモノに手を伸ばした。手のひらに感じた硬さと熱が嬉しくて、僕はアッシュを見上げて笑った。

「アッシュ…気持ちいい?」
「あぁ…英二は…?」
「きもちい…ぁっ」

アッシュのペニスがごりゅごりゅと擦り付けられる。二人分の先走りでぬるついたそれを、アッシュがまとめて握った。僕よりも大きくて骨張った手に扱かれ、僕の腰は快感に追われるように勝手に動いていた。酸素を求めて口を開く。同時に高い喘ぎ声が漏れた。アッシュは濡れた瞳で僕を射抜き、役立たずになった唇を柔らかなそれでふさぐ。
快感に脳がとけていく。与えられたら次が欲しくてたまらなくなる。僕の欲は果てがなかった。もっと、もっとアッシュに触れられたい。アッシュに触れたい。一つに、なりたい。
考えたわけではなく、体が勝手に動いた。アッシュと一緒になって、ペニスを握る。先端を刺激すると、アッシュの喉から低く掠れた声が漏れた。手の動きが早くなる。絶頂を極めたのは僕の方だった。体を仰け反らせ、息を詰まらせる。勢いよく出たそれは、僕とアッシュの腹を濡らした。
イッたばかりで小さく震える僕を気遣ってか、アッシュは動きを止めてそっと僕の頬を撫でた。呼吸を奪うようなキスとは違う、触れるだけの優しいキスがたくさん降ってくる。
僕は吐き出された精液を指に絡ませた。そのまま濡れた指を後ろに這わせる。僕の動きに気づいたアッシュが目を見開いた。

「英二…なに、を…」
「ん、アッシュ…おねがい…」

くぷ、と自分のアナに指を入れる。こうすれば、繋がれる。『記憶』を思い出したわけではないが、僕の体は覚えていた。
ここを、解して、やわらかく、して、そうすれば。アッシュと一つになれる。
ふやけ切った頭では、それしか考えられなかった。
アッシュの目が、ギラギラしている。嬉しい。僕が笑うと、アッシュは僕の膝裏を掴んだ。

「あぁっ…!」

アッシュの長い指が、アナに入ってくる。ぐにぐにと広げられ、僕は自分の指をアナから抜いた。体の奥底から湧き上がってくる快感の波に意識をさらわれそうになる。解す指が増やされ、耳元ではアッシュの興奮した息遣いがした。視線が絡み合い、何度もキスをする。
僕はアッシュの金髪をかき混ぜ、必死にキスに答えた。まだ達していないアッシュのペニスに手を伸ばす。

「え、いじ…!」

アッシュが焦ったような声で僕を呼んだ。手首を掴まれ、手の動きを止められる。

「お前の、ナカに…入り、たい…」

先走りでぬめるペニスの先端が、指を埋めたままのアナに触れる。

「きて、あっしゅ…」

僕がアッシュの首に抱きつくと、アナから指が引き抜かれた。その衝撃に軽くイキそうになる。間を置かずにアッシュの熱いペニスが、僕のナカへと入って来た。

「あっ…んぅ…っ…!」
「は、…英二っ…えいじ…!」

狭い肉の輪を広げ、じわじわと奥へ進む。汗で濡れた体がすべる。指の先が痺れて、上手くしがみつけない。このまま宙に浮かんでしまうのではないかと錯覚してしまう。アッシュが耐えるように眉を寄せる。綺麗だと思った。
自分のナカに入ってくる熱が、愛しくて仕方がない。ゆっくりと時間をかけて、アッシュは僕のナカに全ての熱を埋めた。

一気に『記憶』が僕の中に流れて来た。目まぐるしく過ぎ去る光景には既視感があった。世界を繰り返す時に見た光景と同じなのだ。大量の記憶の中には恐ろしいものもあった。おびただしい量の『記憶』が僕を押し流す。助けを求めて手を伸ばすと、誰かが僕の手を掴んだ。

力強く抱きしめられ、意識が引き戻される。目の前にアッシュの瞳があった。心配そうに僕を見下ろしている。

「英二…?聞こえてるか?」
「あ…あっしゅ…」

僕が答えると、アッシュは安心したように息をついた。ゆるゆると腰を揺すられ、深く繋がったままだったことを思い出す。

「どこにも、行かないでくれ」
「う…ん」

ずちゅ…、ずちゅ…、とゆっくりとした律動が始まる。僕はアッシュの背に腕を回してしがみついた。気持ち良くて、幸せで、アッシュが可愛くて仕方がない。
アッシュが望むなら、なんだってできる。離れないで、ずっとそばにいたい。
アッシュの頬に頬を寄せ、擦り付ける。湿った肌がピッタリと重なった。

「そばに、いるよ」

そう言って、僕はアッシュにキスをした。触れるだけではない、深いキス。舌を絡ませ、溢れる唾液を飲み込んだ。アッシュの荒い息が僕の頬に当たる。動きたいのを我慢しているようだった。僕はアッシュの耳元で囁いた。
再び、緑の目に獣の光が宿る。ぎらついた目で睨まれ、僕はゾクゾクとした快感を覚えた。アッシュが僕の腕をほどいて上体を起こす。大きな手で腰を掴まれ、次に来る衝撃の予感に、僕は短く息を飲んだ。
ずぱんっ!と奥まで突き上げられる。僕は背をしならせた。

「ふぁ…ぁあっん!あぁ…!あっ…!ぅ、…んぁっ…!」

激しい突き上げに、口から勝手に声が漏れる。濡れた音と、肌のぶつかる音が響く。もうまともな言葉は出なかった。
ごりゅごりゅと敏感なナカと擦り上げられる。電流が流れるような衝撃を感じ、僕は大きく体を震わせた。過ぎる快感に、脳が完全に溶かされる。一際高い声を上げ、触ってもいないのにペニスから精液を吐き出した。その反動でナカにいるアッシュを強く締め付けてしまい、アッシュが低く唸った。
僕から引き抜こうと、アッシュの腰が動く。それを、僕は反射的に止めていた。
欲しい。アッシュの全部が欲しい。離れたくない。離したくない。そんな欲だけで、僕の頭はいっぱいになっていた。今この幸せを逃したくない。
アッシュの腰に脚を絡ませて、ぎゅっと力をこめる。アッシュが「英二っ!」と焦った声で呼んだが、僕は離さなかった。
上手く動かない舌を、一生懸命に動かして言葉を紡ぐ。伝えなくては。僕が今求めているものを、アッシュにちゃんと、伝えなければいけない。

「あっしゅ…はなれ、ないで」

幾度もの失敗を繰り返してきた。アッシュに信じてもらえなくて、突き放されたこともある。それが、今、こんなにも深く繋がり合って、愛し合っている。
奇跡としか言いようがない。
嬉しくて、涙が溢れた。震える手をアッシュの頬に伸ばす。赤くなった頬を撫で、僕は笑った。
アッシュは黙ったまま、僕の手を取って手の甲に口づけた。ぐぐっと、深く腰を押し付けられる。始まった律動に合わせるように、僕も自然と腰を揺らした。
耳元でアッシュが何度も僕の名前を呼ぶ。僕もアッシュを呼んだ。
感じる所をペニスで押しつぶされ、悲鳴のような喘ぎ声が上がる。ビクビクと体が震え、一瞬意識が白く塗りつぶされた。長い絶頂の中にいる僕を捕まえるように、アッシュが強く抱きしめてくる。
これ以上ないほど深く繋がったまま、アッシュの腰が小刻みに震えた。お腹の奥に勢いよく熱が放たれる。その刺激すらも、快感だった。
アッシュが僕を求めて、僕のナカで達してくれた。その事実がとても…―。

「うれ、しい…」

ふふ、と笑うと、アッシュの表情がだんだん険しくなった。また何かを耐えている顔だ。何も我慢する必要はないのに、今度は一体何を耐えているのだろうか。
僕がそれを訊ねる前に、アッシュは動いた。

「え?あ、…んぁっ!?」

繋がったままの状態で、体を引き起こされる。アッシュは僕を抱っこしたまま、ソファから立ち上がった。自重で深まる挿入と、不安定な姿勢に少し恐怖を感じる。落ちないように必死にしがみつくも、手にはもうまともに力が入らなかった。
しかしアッシュは僕がしがみつかなくとも何の問題もなく、僕の体を軽々と持ち上げたまま寝室へと歩を進めた。揺れる度に、ナカで出された精液がかき混ぜられる。アッシュのペニスはもう完全に勃起していた。
ボスン!とベッドの上に押し倒される。背中に触れるシーツが冷たくて心地よかった。さらさらしたそれは、すぐに僕らの汗を吸って湿っていく。
アッシュは腰を打ちつけながら、僕の唇を貪った。










歯止めが、きかない。



英二が『記憶』を取り戻してから、俺は英二のそばを片時も離れなかった。誰がいようと関係ない。英二の手を握り、腰を抱き、たくさんのキスをした。恥ずかしがる英二の姿が可愛くてたまらない。こんな可愛い英二の姿を他の奴らに見せるのは嫌だった。だが同時に、こんなにも可愛い英二が俺を愛してくれているのだと自慢したい気持ちにもなった。


ソファの上で英二と繋がった瞬間、今までに感じたことのない快感に包まれた。意識が宙に浮かぶ。魂が体から離れ、英二の中に入り込むような、そんな錯覚を覚えた。英二は一瞬気を失っていたようだった。焦点のあっていない黒い瞳に俺が映る。焦って英二を呼ぶと、すぐに戻って来てくれた。
動きたい衝動を抑えていた俺に、英二が「我慢しないで」と甘い声で囁く。俺のなけなしの理性が、ぶちぶちと音を立てて切れた。
傷一つない綺麗な腹筋を撫でる。腰を掴んで欲望のままに動くと、英二はそれに応えるように締め付けて来た。
ナマで入れるつもりも、ナカで出すつもりもなかった。でも、この衝動はどうすることもできなかった。
求められるままに、求めるままに、ひたすらに貪る。英二の引き締まった脚が体に巻き付き、俺は英二の最奥で欲をぶちまけた。
信じられないくらいの快感と幸福感に満たされる。英二はとろけきった瞳で俺を見上げ、ふわりと笑った。続けられた言葉に、俺は第二の理性の壁が完全に瓦解する音を聞いた。

繋がったまま英二を抱え、寝室に向かう。歩を進める度にナカに吐き出した精液が漏れ、英二が小さく喘いだ。その声と刺激で簡単に俺のペニスは硬くなる。腕の中で震えている英二が可愛い。寝室のドアを半ば蹴り開け、ベッドに倒れこむ。英二が喉をそらして喘いだ。汗が伝う首筋を舐め上げ、唇をふさぐ。英二はハフハフと一生懸命に呼吸していた。つるりとした小さな舌を吸う。小刻みに腰を打ちつけると、くぐもった喘ぎ声が漏れた。
ナカは俺の精液で溢れていて、動くたびに酷い音がする。熱く濡れた柔らかい肉が、俺に絡みついて離れなかった。ずっとこうして繋がっていたい。
英二と視線を合わせる。大きな瞳から涙が零れた。キラキラと光るそれに、唇を寄せる。塩辛いはずなのに、なぜか甘く感じた。俺が英二のペニスの手を伸ばすと、英二がいやいやと小さく首を振った。

「あ、それっ、だめ…!」
「なんで?」
「だっ…、またっ、イッちゃう…からぁっ…!」
「かわいい」

英二が舌足らずな声で懇願する。可愛すぎる。俺で感じてくれているのが嬉しい。何度も間を空けずにイクのはキツイと分かってはいたが、それよりも英二のイク顔が見たいという欲が勝った。
勃起したペニスを少し強めに擦り上げる。同時に前立腺を突いた。

「あ、あっあぁ…!!」
「えいじ、いっぱいイッて…きもちい顔、見せて」
「ま、…ぇっ…あっしゅ…んぅっ…!」

両目をぎゅうっと瞑って、英二が体を震わせる。俺は英二のイキ顔を見下ろしながら、腰を深く突き入れた。ナカがうねって、強く締め付けられる。全てを搾り取られるような勢いだった。その快感の波をどうにか耐え、小さく律動を開始する。英二の良い所を突くと、英二は目を大きく見開いた。

「あ、ぇ、…まって、ぇ…っ!」
「待たない、英二が言ったんだろ…我慢しないでって」

英二の精液で濡れた指を、腹から胸に滑らせる。乳首をヌルヌルと撫でると、また英二のナカがうねった。
苦しそうな呼吸を繰り返す唇に食らいつき、乳首を指で押しつぶし、ペニスを腹で擦り上げながら、ナカを貫く。アナからは俺の出した精液がかき出され、シーツをぐっしょりと濡らしていた。
手加減しないと、優しくしないと。そう考えている自分がいるのに、体はまったくいう事を聞かない。まるでセックス覚えたてのガキそのものだった。
ばちゅ!ばちゅ!と粘度の高い水音がする。しなやかな脚を抱え、英二の奥にペニスを突き入れた。甘い喘ぎ声に体温が上がる。可愛い、もっと聞きたい。

「あっしゅ、あっしゅぅ…んんっ…!」
「英二、可愛い…はぁっ…もっと、呼んで…っ!」

俺が頼むと、英二は一生懸命俺の名前を呼んだ。潤んだ瞳で俺を見上げ、震える指先を伸ばしてくる。俺はその手を取って、指先にキスをした。爪の先まで可愛いと思う。指を口にふくんで舌を絡めると、英二は恥ずかしそうに目を細めた。可愛い。可愛くてたまらない。
腰の動きを速める。手と手を合わせ、指を絡ませる。「出すぞ…っ!」と告げると、英二は何度も頷いた。二回目だというのに、大量の精液を英二のナカに叩きつける。じわりと広がる熱の感触に、英二は小さく喘いで体を震わせた。
ゆっくりとペニスを引き抜く。アナからごぷり、と精液が零れた。それを見て目の奥がカッと熱くなる。

…まだ、足りない。

英二は肩で息をしていた。繋いでいた手から力を抜いて、くってりと体をベッドに沈めている。たくさん精液を吐き出したペニスは萎えていた。

…もっと。

汗と精液で濡れ光る体と、無垢な顔が噛み合わない。赤く色づいた胸を大きく上下させ、英二が徐々に目を細めていく。大きな瞳が瞼の下に隠れる前に、俺は英二の顔の横に両手をついた。

…もっと、英二が欲しい。

熱い頬に唇を寄せる。軽くついばむようなキスを重ねると、英二はくすぐったそうに身をよじった。その体を逃がさぬよう、後ろから抱きしめる。俺の昂ぶりを腰に押し付けると、英二の肩が小さく跳ねた。

「アッシュ…?」

英二のうなじに吸い付く。ジュっと音を立てて吸い上げると、「ひぁっ!?」と英二が可愛い声を上げた。くっきりとついたキスマークに軽く歯を立てる。黒髪に鼻を埋めて深く息を吸うと、英二の匂いで肺が満たされた。汗のにおいですら甘い。英二は何もかもが完璧だ。

「ん…、あっしゅ…」

英二が後ろ手に俺の熱を撫でる。さっき達したばかりだというのに、俺のペニスはもうガチガチだった。振り返った英二が優しく笑う。俺は英二の手を取って、首筋に顔を押しつけた。強く抱きしめたまま、濡れたアナにペニスをもぐりこませる。1ミリの隙間もなく、ピッタリと体を合わせた。
英二は目を閉じたまま、かすかに瞼を震わせていた。膨大な量の『記憶』が流れ込んでいるのかもしれない。『記憶』の共有がどれだけ脳を疲弊させるか、俺は身をもって知っている。でも、今離れることはできなかった。せめて英二の意識が流されぬようにと、耳元で何度も名前を呼ぶ。軽く腰を揺すると、英二が目を開いた。

「あっ…んぅぅ…っ!」
「英二…、えいじっ、…!」

英二をうつ伏せに押し倒し、深く深くペニスを沈める。背中に吸い付きながら腰を打ちつけた。ドロドロとした熱は尽きることなく、俺は衝動のままに英二の腰を掴んで持ち上げた。腕に力が入らない英二は、枕に頬をつけたまま高く喘ぐ。快感から逃げるように、指先がシーツを引っ掻いた。射精はしていないが、ナカでイッたらしい。唇の隙間から赤い舌がのぞいた。
興奮しすぎて、頭がくらくらする。浮き上がった背骨のラインが綺麗だ。打ちつける度に汗が滴り、英二の背中に落ちた。もう英二の口から意味のある言葉は出ない。俺の名前すらも発音できないようだった。
激しく揺さぶりながら、英二の顔が見たくてたまらなくなる。奥まで貫いた勢いのまま引き抜くと、英二が大きく背中を逸らせて喘いだ。
力の入っていない体を仰向けに返し、再びナカへと突き入れる。英二が小さく首を横に振ったが、止められなかった。両ひざを抱え上げ、体重をかけて押さえ込む。もっと、深く繋がりたい。
一番深いところまでペニスが入り込み、締めつけが一段と強くなる。英二の声も飲み込むように、キスで口をふさいだ。


それから後の記憶は、酷く曖昧だ。
全てを英二のナカに注ぎ込み、バスルームに移動した後も何回か体を繋げた。というのはうっすらと覚えている。その後どうにかして二人で綺麗な方のベッドに裸のまま潜り込み、会話らしい会話をする余裕もなく気絶するように眠った。



目を覚ますと、英二が俺の腕の中で眠っていた。視線を動かして時間を確認する。昼の1時を過ぎたところだった。何時にベッドに入ったかは定かではないが、いつもの英二ならばとっくに起きている時間だ。

…昨夜は本当に無理をさせすぎてしまった。ずっと英二に触れたいと思っていた。それを英二に許されて、俺の理性はあっという間に粉々に砕けた。

すぅすぅと穏やかな寝息を立てる英二を見つめる。無防備な寝顔はいつもよりもずっと幼く、夜の壮絶な色気が嘘のようだった。
俺が欲望のままに抱いて、抱いて、抱きつぶしたのに、英二は少しも汚れていない。綺麗なままだ。それに酷く安心した。
体温の高い体を抱きしめ、胸に耳をあてる。規則正しい鼓動の音が伝わってきた。その音を聞きながら、昨夜の光景を思い出す。そして、だんだん不安になって来た。

我慢しなくて良い、と英二に言われてから、俺はそれこそ獣のように英二の体を貪った。イキ過ぎて辛いのも、『記憶』が流れ込んで混乱するのも分かっていたのに、それを気遣う事なんて一切できなかった。英二の事よりも自分の欲求を優先してしまったのだ。タガが外れる、とはまさに昨夜の状態だろう。どんな言い訳をしても、英二に無理をさせてしまったことには変わりない。待って、と言われても止まらなかったし、そのせいで最後の方の英二はまともに話せなくなっていた。

改めて考えるまでもなく、俺、最低な事をしたんじゃないか…?

英二の胸から耳を離す。寝顔を見下ろすと、ピクリと瞼が動いた。黒い睫毛が揺れる。起きる、そう思うと一気に不安が増した。

英二が起きたら何て言おう。まずは無理させたことを謝らなければ…ん?でも誘って来たのは英二だったような…いや、これは絶対言っちゃダメなやつだ。そんな事を口にするクズ共と同類にはなりたくない。とにかく俺が英二に無理をさせた事に変わりはないんだ。

「んぅ…」と英二が小さく声を漏らす。その声がまた腰に響く声だった。

やめてくれ、本当に。自分がこんなに堪え性のない人間だとは思わなかった。クソ。どうしてこう、いちいち可愛いんだコイツは。

英二がゆっくりと目を開く。潤んだ瞳が俺を見つめ、それにまた心臓が変な音を立てた。英二が起きた。
早く、昨夜の事を謝らなければ。そう思うのに、俺は英二の瞳に見惚れてしまっていた。じっと見つめ返すと、英二の頬がみるみるうちに赤くなる。そして、「ふへ…」と間抜けな声を出して笑った。
この反応は全くの予想外だった。昨日あれだけの事を強いたのに、英二の表情に俺を責めるような雰囲気は欠片もない。それに、この天使のような、いやまさに天使としか言えないこの無垢な笑顔。何なんだ、一体。俺は今何を見ているのだろうか。

「アッシュがいる」

そんな当たり前の事を、とても幸せそうな顔で言って、英二は笑った。その目には涙が滲んでいる。もしかすると、辛い『記憶』を見てしまったのかもしれない。そう思い至り、俺は胸が締め付けられるのを感じた。
英二の名前を呼んで、力強く抱きしめる。合わさった胸から鼓動が伝わった。

「英二…愛してる」

こんな言葉だけじゃ到底表現できない。それくらいに、英二を愛している。英二が俺のすべてだ。
涙の滲んだ目元にキスをする。すると、英二が両手で俺の頬を包んだ。

「僕も、愛してるよ。アッシュ」

小さな声でそう言って、英二は俺の唇にキスをした。短い、触れるだけのキスで、俺はとてつもなく幸せな気分になった。
夜あれだけ激しく交わったというのに、英二は照れながら「ちょ、ちょっとは上手くなったかな?」だなんて可愛すぎる事を言っていた。本当にやめろ。少しは可愛さを抑えられないのかコイツは。
俺がどれだけ耐えているかも知らずに、英二が真っ赤な顔で言葉を続けた。

「あと、ね…昨日、アッシュにばっかり色々させちゃって、ごめん」
「は…?」
「こ、今度は僕も、その、もっと色々頑張るからっ」
「ちょっと待て!」

いやいやいやいや何を言ってるんだコイツは?え?頑張るって、なに?セックスを?あれ以上煽られたら俺はどうしたら良いんだ。大体謝るのは俺の方なのに、何で英二が謝る?一体何が起きているんだこれは。
混乱する俺を、英二が不安げな顔で見上げてくる。その上目遣いを今すぐやめろ可愛いクソ!

「英二、お前…その、昨日のアレ、嫌じゃ…なかったか?」
「へ?何で?」
「俺、止まれなかったし…無理させただろ」
「あ…と、その…」

じわじわと昨日の事を思い出して来たらしい。英二は耳まで赤くなっていた。大きな目がきょろきょろと動く。

「いやじゃ、ないよ?むしろ…すごく、嬉しかった」

俺としては初めて英二を抱く時は、もっと英二の体に気遣って抱くつもりだった。ナマで中出しだなんて言語道断だ。最低な事をした自覚はある。だというのに。
英二は無邪気に笑って、俺の理性の壁に爆弾を投下してくるのだ。

俺は英二の顔から無理やり視線を外すために、英二の頭を自分の胸元に押し付けた。寝ぐせのついた黒髪をわしゃわしゃとかき回す。そして、ぎゅっと抱きしめた。

「俺が、怖くなかったか…?」

理性を失い、獣のように英二の体を貪った俺が、怖くなかったのか。
似たような事を、『いつか』の世界でも聞いたような気がする。英二は俺の胸板を押し返して顔を上げた。

「まさか!」

キラキラとした、満面の笑みで答える。俺の中にあった不安は、一気にかき消えた。






『何度でも、変わらぬ答えを』



END




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