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「こいつぁ、高く売れるぜ」

背後の男はそう言ってニヤリと嫌な笑みを浮かべた。

そして、性器に触れていた指を穴に這わせた。

大きく肩が跳ねる。
まさか、こやつら…!

「っや、…やめろっ…!」
「その反応!処女じゃねぇなぁ?」

ガサガサした太い指が、穴の縁を撫で回す。
しょじょ、の意味は分からぬが、男のしようとしていることは分かった。
正面の大男もいやらしく膝を上下に動かして来る。
半分脱がされた着物で擦り上げられ、徐々に性器が固くなってきた。
芯を持ち、熱を持つ。
私は必死に頭を振った。

「あっは!前、濡れて来たぜ」
「おい、その服の紐かせよ。コイツ縛ってヤりてぇ」

大男がそう言うと、背後の男が私の腰から完全に帯を抜き去った。
そして大男に手渡す。
それを受け取る時に、右手を放されたがたいした抵抗は出来なかった。
すぐに両手を取られ、帯で後ろ手に縛られる。

「…っ!放せこの下郎!!」
「はいはいうるせぇなー口も塞ぐか」
「この高飛車な喋りが良いじゃねーか、このままやろうぜ」

袴を取り払われ、そのまま冷たい地面に押し倒された。
下敷きになった手が痛む。

「このアンクルもカーティア製か。留め具がねぇけど、溶接してあんのか?」
「案外コイツ誰かに飼われてるペットだったりしてなぁ」

男は笑いながら、下履きの前から性器を取り出した。
赤黒いそれはキッドよりもかなり小さい。

…あんなもの入れられたところでどうともない。

男はそれを私の眼前に突き出して来た。

「ほぉら、可愛いお口でしゃぶってくれよ?」
「…はぁ?」

一体何を言っているのだコイツは。
せっくすをしたいのではなかったのか?
なぜ性器をしゃぶる必要があるのだ?

「わかんねーの?俺のでっかいチンコをお前の小さい口の中に入れろって言ってんの」
「貴様頭がおかしいのか?そんな粗末なものを私の口に入れる?」

粗末なもの、と言った時点で男の顔から笑みが消えた。

「そんなことをしてみろ、一瞬で食いちぎってくれるわ」

普通の人間よりも鋭い犬歯を見せて笑うと、男の手が私の首を掴んだ。
ギリギリと絞め上げられる。

「ぁっ…が…っ!」
「生意気言いやがって、ここで殺してやっても良いんだぞ」
「おいおい、本気になるなよ」

ずぽっ!と男の指が口の中に突っ込まれる。
噛み付こうにも首を絞められているせいで顎に力が入らなかった。
息ができない。視界がだんだん暗くなり始めた。

「んぅ…っぁ…!!がっ…ゲホッ!ゴホッ!!」

首から手が離れる。
同時に口の中の指も抜かれた。
あと一瞬抜かれるのが遅ければ食いちぎってやったものを。

「首絞められてもびびらねーか。なかなかだな」

睨みつけていると男たちはそんな私を見て笑った。
そして、私の唾液に濡れた指を何の迷いもなく穴に突き入れる。

「…っんぁ!?」
「おーおー入る入る」
「使えそうか?」

ぐちゃっぐちゃっぐちゃっ!
濡れた音が立ち、私は思わず固く目を瞑った。

「使えるだろこれは!いい感じの締め付け」
「じゃあ、2、3発ヤッてから連れてくか。中出しすんなよ」
「ぁ、…やめ…」

ぐちょっ!!
穴に入った指の本数を増やされ、私は背筋をしならせた。
そのまま男はかき回すように指を動かす。
腹側を引っ掻くように指が動き、ある一点にそれが触れた時、私は高い声を上げてしまった。

「俺のもの粗末なもの呼ばわりしてたくらいだからな、いつもはもっとスゲーの入れてんだろ?」

男は自分の性器を自分の手で擦りながら、私を見下ろした。
私は上がった息を落ち着かせ、言い返してやった。

「当然だ」










食事を終え、店を後にしたキッドとキラーは、街の中心部にあるホールへと入って行く人の列を眺めた。
全員様々な仮面をつけ、きらびやかな衣装で着飾っている。

「なんだ?舞踏会でもあんのか?」
「どうだろうな、港ではそんな話は聞いていないが」
「ま、どうせ綺麗な床しか歩いた事ねーような連中のお祭りだろ。俺達には関係ねぇな」

キッドが呆れたような声で言うと、キラーも「違いない」と返した。



それから船に戻り、キッドは真っ直ぐに自室へと足を運んだ。
店でヤクニの機嫌を損ねてしまったが、まだ怒っているだろうか。
明らかにキラーに対しての嫉妬心が見えていたため、キッドは割と気分が良かった。
他の船員に対してはどうでも良いという態度を貫くヤクニだが、キラーに対しては違う。
どうでも良い、ではなく敵意というか、嫉妬心を抱いていた。
キッドの右腕の位置に座っている彼の存在がヤクニにとっては面白くないのだろう。
今まで女がキラーと己の位置を比べるような真似をすれば、キッドは即座に殺していたが、ヤクニは違う。
面倒な事に変わりはないが、ヤクニが嫉妬するのは愛おしく思えた。

キッドは今夜どうヤクニを抱こうかと考えながら、ドアを開けた。











「ヤクニがいねぇ」

キラーの部屋に入って来るなり、キッドはそう言った。
あまりに唐突過ぎて、キラーは沈黙してしまった。

「ヤクニがいねぇんだよ、船に」
「…あぁ、2秒前に聞いた」
「やっぱり道に迷ったんじゃねーか?一人で歩かせた事ねぇしな…」

キッドは椅子に座る事なく、部屋の中をぐるぐると歩き始めた。
普通に考えたら、ヤクニはキッドが無理矢理に捕まえたに過ぎない存在だ。
逃げたと考えるのが妥当だろう。
そうは思ったが、キラーは口に出せないでいた。
それに、キラー自身もそれは不自然に思えた。
キッドに対しては懐いているヤクニが、わざわざ自分からキッドの元を離れるようには思えない。
店を出る時だって、最初はキッドと一緒に出たがっていたのだ。

「探しに行くか?誰かに絡まれているのかもしれんしな」
「アイツに絡んだら確実に殺されるけどなぁ」

キラーが靴を履き直して立ち上がると、同時にドアをノックされた。
返事をする前にドアが開かれ、一人の船員が入って来た。

「失礼しまっす!なんか面白そーな話聞いたんスけど、行ってみません?オークション」
「オークションだぁ?今それどころじゃねーんだよ」
「いやいやいや船長聞いてくださいよ!噂によるとこのオークション、色んな人間を売ってるらしいっスよ?」
「俺はヤクニを探しに行く。行きてーならテメーだけで行きな」

キッドはまるで興味を示さず、船員を押しやった。

「えーー。そんな金持ってねーっスよぉ」
「待て、キッド」

廊下を歩いて行くキッドを呼び止めたのはキラーだった。
窓の外に見える三日月を指差す。

「アレは、人間になってるんじゃないか?前もこんな三日月の夜だっただろう?」
「えっと…そ、う…だったか…?」
「大体、アレは人間が大勢いる場所を嫌っていたはずだ。船に戻らずに街をうろついているなんて、不自然じゃないか」

キラーの言葉に、キッドは目を見開いた。
そして、オークションの話を持って来た船員の肩を勢い良く掴む。

「おい!そのオークションってのはどこであんだ!?」




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