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15曲目『フラワーパレス』
島に到着し、ハートの海賊団のテンションはうなぎ登りだった。
皆生き生きと上陸の準備を進める。
ローも表情こそいつもと変わらなかったが、どこか楽しそうだ。
島に到着したことすら知らない黒猫は、皆のテンションの上がりように目をキョロキョロとさせていた。
今から何が起こるのかワクワクしているらしい。
尻尾が楽しげにゆらゆらと揺れている。
そんな黒猫にバスケットを手にしたベポが歩み寄った。
バスケットの中には、真っ白なふわふわのタオルが敷き詰められている。


「チビちゃん、お出掛けしようか」


黒猫はそれに答えるように「みぃ!」と一声鳴いた。










バスケットが揺れる。
久しぶりの地上にベポも気分が高揚しているらしい。
その足取りは弾んでいた。
黒猫はバスケット縁に前足を乗せて、辺りを見回した。
大勢の人が行き交っている。
かなり栄えている商店街のようだ。
ローはベポ達の三歩ほど前を歩いていた。


「フラワーパレスにようこそ!」


色とりどりの花が入ったカゴを手に、少女達が笑顔で花を配る。
道行く人に次から次へと花を渡していく姿は軽やかなダンスを踊っているようだった。
一人の少女がローの前にひらりと歩み出る。
綺麗なお辞儀と共に薄ピンク色の花が差し出された。


「今週は花祭りなんです、一輪どうぞ」


流れるような動作で手渡され、ローはいつの間にか花を受け取っていた。
少女には似合っていたが、ローにはあまりにミスマッチだ。
横で見ていたシャチが笑いそうになっていると、少女はすかさずシャチの胸ポケットに花を差し込んだ。
最早達人技だ。


「真言華(トゥエル)という花です。フラワーパレスにしか咲かない珍しい花なんですよ」


花の解説をしながら、少女はペンギンとベポにも花を手渡す。
そして黒猫にも。


「あら、可愛いお客さん」


少女はニコリと笑って黒猫の入っているバスケットの中に花を入れた。


「どこが珍しいの?」


六枚の花弁を持った薄ピンク色の花は、少女が言うほど珍しいものには思えない。
ベポが訊ねると、少女は慣れた調子で説明し始めた。


「この花は持っている人の嘘を見抜くと言われているんです。今は薄ピンクの花弁ですが、嘘を吐くと真っ赤になるんですよ」


「真っ赤な嘘ってやつですね」と少女はコロコロと笑った。


「ですから、花祭りの間は誰も嘘を吐けないんです」
「へぇ〜」


ベポがまじまじと真言華を眺める。
黒猫も真言華に鼻先をくっつけて見ていた。


「では皆さん、花祭りを楽しんでくださいね」


そう言うと、少女は軽やかな足取りで再び花配りの仕事へと戻った。
その後ろ姿を眺め、ローは一言「胡散臭ぇ」と呟いた。





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あきゅろす。
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