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14曲目

*


雑音にまみれた映像。
モノクロの世界は酷く寂しかった。
俺以外に誰もいない。
ふいに、目の前に小さな湖が現れた。
湖には細長い竹が立てられている。
誰かが俺を呼んでいた。
しかし誰なのか分からない。
俺を呼んでいると分かるのに、何と呼ばれているのか分からない。

気づけば俺は竹の上に立っていた。
落ちてはいけない。
反射的にそう思った。
しかし、俺の体はぐらりと均衡を崩した。


水の中に落ちる。


水面へと伸ばした手は、人間のそれだった。




*


ビクリとして俺は目を覚ました。
視界に映る手は猫の手。
俺はやっぱり猫だ。


「どうした」


ローに話しかけられ、びっくりした俺は尻尾をピンと立てた。


「猫も夢なんて見るのか?」


ニヤリとローが笑う。
…夢?
そんなもの見ただろうか。
見たのだとしてもローにびっくりした拍子に全部忘れてしまった。


それからローは俺を元いた部屋に戻した。
部屋にはシャチとペンギンがいた。
どうやらいなくなった俺のことを探してくれていたらしい。


「もー!船長勝手にチビを連れてかないでくださいよーめちゃくちゃ探したんスから!」
「どこかで動けなくなっているのかと思いましたよ…」


シャチが文句を言い、ペンギンがため息をつく。
ローは少しも悪びれずに「悪かったな」と言って笑った。
表情と言ってることが噛み合ってない。
シャチはローから俺を受け取ると「お前もされるがままじゃなくて、嫌な時は嫌って言えよ」と言った。
その言葉にローのこめかみがピクリと動く。


「シャチ、今のはどういう意味だ?」
「あ、い、いや、だから猫なら猫なりの意思表示をしろっていう…」
「もうチビの餌の時間じゃないんですか」


二人の会話にペンギンが割り入る。
少し呆れているようだ。
シャチはペンギンの言葉に助かったとばかりに便乗した。


「そうだ!腹減っただろチビ」


餌入れには新鮮な魚の切り身が入っていた。
俺が食べやすいようにと、コックが包丁で細かく切ってくれている。
魚の良い匂いに、俺は思わず鼻をひくつかせた。


「いっぱい食えよー」


シャチがスプーンで切り身をすくう。
俺は口を出来るだけ大きく開けてスプーンが入ってくるのを待った。
最初は、薬を飲ませる時も俺の上顎にスプーンをガチガチぶつけていたシャチだったが今では俺が食べやすい角度でスプーンを入れてくれるようになった。
おかげですんなり食べることが出来る。
口の中の物を飲み込む。
美味い。

俺が幸せを噛み締めていると、ペンギンがぷっと小さく吹き出した。


「チビお前、本当に幸せそうに食うんだな」


ペンギンの隣でローも笑っていた。


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あきゅろす。
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