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13曲目

歩けるようになるまでしか船にいられないのなら、歩けないままで良い。

一晩眠らずに考えた結果、出た答えだった。
ここの皆は俺のことを可愛がってくれている。
俺も皆のことが好きだ。
だから一緒にいたい。
単純だが、これが本当の気持ちなのだから仕方がない。
皆に心配をかけてしまうのは心が痛むが、こうしなければ船にいられないのだ。


だから俺は歩く練習を止めた。




「何かチビちゃん全然立たなくなったね」


ベポが心配そうに俺を見た。
申し訳なさで胸が痛い。
俺はベポから目を逸らした。


「ベポ、見張りに行け。そろそろ交代の時間だろうが」


部屋に入ってきたのはローだった。
俺を拾って、助けてくれたロー。
でも、俺を飼ってくれる気はない。

どうしたら一緒にいてくれるのだろうか。



「えーまだちょっと時間あるでしょ?」
「ない。良いからさっさと行け」


ベポは文句を言いつつも「アイアイキャプテン」と返事をして部屋を出て行った。
何の見張りか知らないが、見張りに行ったらしい。

部屋はローと俺の二人きりになった。
とても気まずい。
そう思っているのは俺だけだろうけれど、気まずい。
俺はいそいそとタオルの中に潜り込もうとした。
しかし、その前にローに持ち上げられる。
そして膝の上に降ろされた。
見上げるとバッチリ目が合った。
いつもローは隈があるが、今日の隈は一段と酷い。
眠っていないのだろうか。
昨日は俺も寝てないけれど、ローはどうして眠れなかったのだろう。
俺が首を傾げると、ローがフッと笑った。


「猫のくせに眠そうな顔しやがって」


頬をつつかれる。
一体何だって言うんだ?

ローは俺を抱えて部屋を出た。
抱っこしている間もローの手は俺の頭を撫でていた。
機嫌は悪くない、と言うかむしろ良いらしい。

ガチャリとローがドアを開ける。
そこはいつもローが本を読んでいる部屋だった。
俺も何度か連れてきてもらった。
今日もまた本を読むのだろうか。
そう思っていると、ローは俺をベッドの上に降ろした。
靴を脱いでローもベッドに横になる。
何が起きているのかよく分からなかった俺は、ベッドの上で転がったまま固まっていた。
するとローの手が俺を引き寄せた。
ローの腕の中にすっぽりとおさまる。
見上げると、ローはただ一言「寝ろ」と言った。

そしてローは目をつぶった。
顔が近い。こんなにまじまじとローの顔を見るのは初めてだった。
最初に見た時もカッコいいと思ったが、やっぱり近くから見てもカッコいい。
ふせられた睫毛が意外と長くて、思わずドキリとする。
穏やかな寝息に、俺まで眠くなってきた。


ずっとこうしていたいのにな。


俺はゆっくり夢の世界へと落ちていった。



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