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故郷はどこ?

*

俺の料理は辛すぎたらしく、皆汗を流しながらどうにか一皿食べてくれた。
ルフィさんはしばらく舌を水に浸けて冷やしていたくらいだ。
俺としてはもう少し辛い方が好きなのだが、どうやら他の人と大きく味覚が異なっているらしい。

そんな中、ゾロさんは何杯もおかわりしてくれた。
サンジさんもおかわりしてくれたが、限界が来たらしく今はルフィさんと同じく舌を冷やしている。
俺とゾロさんは食べ物の好みが合うようだ。
何だか嬉しくなって、三回目のおかわりは特別大盛りにしてあげた。


「はい、どうぞ」
「…おう」


嬉しくて顔がゆるんでしまう。
俺は自分の分の料理を平らげ、ゾロさんの食べる様子を眺めていた。


「なぁ、ユエの住んでた所では激辛味が普通なのか?」
「たぶん普通だったんだと思うよ?だって俺、これが普通だと思ってたし…」


チョッパー君に訊ねられ、俺は料理を作った時を思い出す。
調理の仕方は体が記憶していたようで、特に頭で考えることもなく手が動いた。


「辛いものを好んで食べる国は、確かイーストブルーにあった気がするな」


サンジさんが食文化から俺の出身地を推測しようとする。
しかし俺は「イーストブルー」と言う言葉にピンと来なかった。


「サンジさん、イーストブルーって何ですか?」
「え?ユエちゃん常識は覚えてるんじゃ…」
「すみません、分からないです…」


サンジさんが驚いたように目を丸くする。
ちょうどその時ゾロさんが最後の皿を完食した。
鍋の中は空っぽだ。


「ゾロさん、もうおかわりないです」
「…そうか」
「あ、あの、またいつでも作りますよ!」


俺がそう言うと、ゾロさんはふい、と目を逸らした。


「うまかった」


ぼそりと言って立ち上がる。
そして食堂を出ていってしまった。
俺は嬉しくて顔が熱くなるのを感じた。

ゾロさんに褒められた!
男らしくてカッコ良いゾロさんに褒められると嬉しさも倍増だ。

俺は火照る顔を押さえて嬉しさに悶えた。



*



喜び照れるユエの姿は、さながら恋する乙女のようだった。
周りの皆がそう思っているとは知らず、ユエはゾロが出て行ったドアばかり見つめている。


「…でもまぁ、これがユエの故郷の味だとすると、ユエが痩せてるのも納得できるわね」


サンジの料理で口の中を落ち着かせたナミが言う。
ロビンはそれに頷いて同意した。


「それで、イーストブルーのどこの料理なんだ?」


ウソップがサンジに訊ねる。
サンジは水を飲み干し、腕を組んだ。


「それが思い出せねぇんだよな…ちょっと本で調べてみる。同じ料理があるかもしれねぇからな」
「ユエさんの故郷が分かれば記憶も取り戻せるかもしれませんしね」
「おっ、さっそく道がひらけて来たじゃねぇか!」


ブルックとフランキーが嬉しそうに言う。
しかし当の本人は全く聞いていなかった。
いまだにドアの方を見てぽやんとしているユエを、舌が復活したらしいルフィがつつく。


「え、あっ!な、何ですか?」
「故郷がイーストブルーなら、俺と同じ海だな!」
「え?そ、そうなんですか?」
「おう!」


まだユエの故郷がイーストブルーにあると決まったわけではないのだが、ルフィの中では決定しているようだった。
話を聞いていなかったユエはあやふやな相槌を打ってルフィに合わせている。


「あのね、まだイーストブルー出身って決まったわけじゃないのよ?」


ナミが呆れ気味に突っ込む。
ルフィは気にせず「しししっ!」と笑った。




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