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 変化は小さなものだった。

 次の日俺は、珍しく朝から学校に登校した。結局バイトは休みを貰って、家で爆睡したものだから、変に目が冴えちゃって困る。
 でも朝日を浴びる蓮見ってのも良いよね〜。
 俺は席につくなり、いつものように蓮見ににっこり笑いかけた。

「やっほ〜蓮見〜今日も目が冴えるほど格好良いね!」

 蓮見からの反応は無視かガンつけか罵倒の言葉か、いつもならこのどれかなんだけれど。

「ああ……」

 なんと今日は俺の挨拶に頷き返してくれた。え、なんか嬉しい! でもこれって、もしかして昨日の事気にしてるの?

「いや〜ん、なんか蓮見らしくないよう! 俺はもう大丈夫だから、いつもみたいにキツく怒ってくれないかな?」

 うふ、俺って二ノ宮が言ったみたいに、本当にマゾなのかも。蓮見限定で。

「具合、もう良いのか」

「うん、一晩ぐっすり眠ったらもう全快だよ! 桜井君にも心配掛けてごめんねって言っといて〜」

 桜井君の名前を出したら、蓮見が眉を顰めた。あれ、やっぱり俺と桜井君が仲良いの気に入らないのか。でもまぁ、伝言くらいなら良いよね。どうせ今日の昼は屋上に避難するつもりだし。だってさ、一緒にご飯なんて食べてたら、桜井君とかは絶対色々聞いてくる。蓮見はどうせ興味ないだろうから大丈夫だろう、うん、きっと。

 俺の楽観主義は今に始まったことじゃない。でもねぇ、そうじゃなくても、まさか俺が校庭でぶっ倒れたことが、既に風紀委員長の耳に入っていたなんて思いもしないじゃない。

 その日の昼休み、風紀委員会による抜き打ちの服装検査が行われた。もちろん俺ってば、NG連発!

「長谷部優希、違反7つ、没収品5品。放課後風紀委員室まで来るように」

「うは〜……」

 俺のアクセちゃんが! いや、落ち着いて俺。今はそんなことより、目の前で人のいい笑み浮かべている、この悪魔からなんとか逃れなければ。

「君も相変わらず懲りないね。何度反省させてもこれなんだから」

「あははははー」

 二ノ宮風紀委員長サマの登場です、はい。乾いた笑いしか出ないってのー何が悲しくて、教室にいてまでこいつの顔を拝まなきゃならないの……。
 しかし周りの反応は違った。

「やべー本物だ」

「う、麗し過ぎる……」

 風紀委員長直々のお出ましに、1年A組は小さなざわめきと興奮に包まれていた。なんか廊下の方に子犬ちゃん達が群がっている。
 忘れていたが、この学校での二ノ宮の人気は、生徒会長と二分されているほどなのだ。
 あ〜この腹黒鬼畜変態野郎に羨望の眼差しが降り注いでいる。みんな見る目なくない? っていうかさ、なんで委員長自らこんな雑務こなしてんのよ。暇なの? ねぇそうなの?

「あの〜今日用事あるんで、明日じゃ駄目ですか?」

「そんな事を言って逃げる気かな? 学校一の問題児君。それじゃあ仕方ない、今すぐ来てもらおうか」

 うは、墓穴掘った。二ノ宮からの呼び出しなんてやる事は決まっている。
 でも今日こそバイトに行かなきゃいけない俺は、眉毛をへたりと下げながらも、頷くしかなかった。



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