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日常の始まりC

 心の中では念仏のように蓮見蓮見と唱えていた。目を伏せて二ノ宮を視界から消し去れば、ちょっとは蓮見にご奉仕してる気分になれるかなって。

「んっ、んう……」

「へぇ、上手じゃない。まるで犬みたいだね」

 クスクス笑う声を聞いて、ちょっとホッとする。ああ、良かった、機嫌直ったのかな。

「そんなに、蓮見君が良いの?」

「!?」

 ハッとして顔を上げた。その途端髪を引っ張られ、無理やりその場に膝立ちにさせられる。

「ひぅっ」

 見えた薄茶の瞳がギラギラと光っていて、俺は恐怖でひくりと喉を引き攣らせた。
 二ノ宮はくつくつと喉で笑うと、俺の未だ立ち上がった中心を膝で押し潰す。

「つ、やめッ」

「銜えて立つんだ? とんだ淫乱だね」

「あ、ぅ痛いッ」

 押す力を強められ、思わず掴んだ二ノ宮の肩に爪を立てた。だがその変わりに、更なる苦痛を与えられる。

「ひ……ァッ」

 二ノ宮の膝の上に乗せられ、胸の突起や肩を噛まれた。

「良い? 俺としている時に余計なことを考えるな」

「……嫌だよ。だって、俺はいつも蓮見のことしか、っうあああッ!」

 言い終わる前に強く前を握り込まれて、意識が飛びかけた。体が崩れ、二ノ宮に凭れかかると、太い腕が支えるように、背や腰に回された。

「痛いでしょ? これが犯されるってことだよ。こうやって、大事なとこ全部見られて触られる」

 耳元で響いた低い声。腰を撫でていた手が下へと這い、尻の割れ目を撫でる。悪寒が背筋を走った。

「う……っ」

 ガタガタと足が震える。二ノ宮の顔を見たくなくて、男の肩に額を押し付けた。周りを撫でていた指が、再び穴に入り込む。中指と人差し指が広げられ、俺は不快感に涙を浮かべた。

「もう3本も入る。ほら」

 言葉通り、二ノ宮が後ろの穴に指を3本突っ込んだ。指がばらばらに動いて、中を探る。二ノ宮は俺に言い聞かせるように、中の熱さや柔らかさを話した。

「ピクピクしてる。前もだらしなく汁垂れてるし」

「……う、っさい、いぁっ!?」

 勃起して敏感になった先端に爪を立てられ、身を捩った。でも逃げたくても急所を掴まれててどうすることもできない。

「誰がうるさいの? ああこのいやらしい穴のことかな、それともこっち?」

 前も後ろもローションや精液でぐちゅぐちゅと音を立てていた。それをくすりと笑われて、悔しさで涙が浮かぶ。
 もう、叫びだしたかった。

「や、もうっ、許し……」

「何言ってるのこれくらいで」

 これくらい? そうだ、まだアレが残ってる……。
 青褪めた俺に、二ノ宮は愉快そうに口端を上げた。

「ねぇ、そろそろ本番だよ?」

「あ、まっ」

 制止なんて意味はない。凄い力で床まで引きずられ、俺は無様に転がった。そして再び四つん這いにさせられ、頭を床に押さえつけられる。腰だけが高く持ち上がり、解された穴に二ノ宮のものがあてがわれた。

「しっかり味わいなよ?」

「――あぁッ!!」

 俺は後ろから貫かれた。それはもう優しさなんて欠片もなく。

「うああっ、や、痛、い……っ!」

「大丈夫だから、そんな生娘みたいに騒ぐな」

 初めて男を受け入れたそこは熱く、引き攣れるような痛みを伴った。多分切れているんだと思う。

「ふ、ちょっと締めすぎ……」

「いっ、動か……アァッ」

 内壁を押し広げられ、恐怖で目の前がチカチカと光った。入り口はギチギチと限界まで押し広げられ、固い肉に直腸を突かれる。

「やればできるじゃない。全部入ったよ?」

「っ……」

 気持ち悪くて、痛かった。こんなの、拷問でしかない。繋がったところから、体が壊れていくようだ。

「はは、すごっ……気持ち良いね?」

「んっ、や……ぬ、抜いて……」

「だから、今更なんだよ」

「……ぃたッ!」

 何の前触れもなくケツを叩かれた。もうなんなのこの扱い……。
 間髪いれずもう一度叩かれ、後ろ髪を引っ張られ背を仰け反らせた。グチリ……と繋がった箇所が嫌な音を立てる。

「もう、自分で選んだだろ? お前は俺に足を開いて、女みたいにイイ声で啼いていれば良い」

「……いっ」

 二ノ宮は酷薄に言い放ち、俺の背に噛み付いた。
 逃げようと前のめりになる体を押さえつけ、右手で俺の急所を掴む。

「うっあ、やぁ」

「ほら、前みたいにいっぱいヤらしい汁出しなよ。気持ち良い方が好きでしょ?」

 好きじゃない。望む相手は1人しかいない。……そう心で思っても、巧みな愛撫に体は震え、二ノ宮の手の中で体積を増した。その間、ずっと後ろを穿たれ、苦痛にまみれていたというのに。

「ん、キツいなぁ……」

「…っく……アゥッ」

 緊張で強ばる体は二ノ宮のものを締め付けてしまったようだ。力を抜けと尻を叩かれ、それでも無理だと乳輪ごと乳頭を捻られ、爪でぐりぐりと押し潰された。

「痛いくらいがイイでしょ? ほら、ツンと尖ってる。女の子みたいだね」

 なぶられ過ぎて、乳首が痛い。こんなにセックスって辛いものなの? 膝は擦りむけて血が滲んでる。お尻だってジクジク痛い。良いことなんて何もない。何より、この悪魔のような男が怖い。

「や、だ……ふぅっ」

「泣いちゃったの? でもまだ終わらないよ……」

 二ノ宮がぎりぎりまで自身を引き抜き、一気に奥に叩きつけた。瞬間、世界が白く弾ける。

「はは、今のでイっちゃった? そんなに気持ち良いんだ」

「ひ、ちが……んんッ」

 涙と涎でもう顔はぐちゃぐちゃだった。必死に床に縋り付いて、嗚咽を漏らす。内臓を押し上げられて、涎には少し胃液が混じっていたかもしれない。
 血や汗や悲鳴、体から何かが流れだす度に、心に無数の亀裂が走った。背を抱きしめるように覆い被さり、耳元で荒い息を吐く男が怖くてたまらない。
 嫌だった。振り払って逃げたかった。でも、でもさ……。

「これで、君のハジメテは俺だね? 蓮見君はなんて思うかな」

 笑いながらそう言う二ノ宮よりも、その内容よりも、俺の頭はそのたった一言で埋め尽くされる。
 蓮見……そうだ、これが終われば、また蓮見に会えるんだ。



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