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鋼の心臓B

 デートの最後は商店街のタイムセール。っていきなり甘い雰囲気を吹っ飛ばしてしまったけど、あれです、蓮見が普段俺がどこで買い物してるか知りたいって言うからさ。
 結局プレゼントに関する有益な情報は得られませんでした……。
 次の休みは映画を観てプレゼントを買いに来よう。もちろん1人で。蓮見がいると俺の頭はまともに働いてくれないことを、今日1日で学習した。

「まるで主夫みたいだな」

 食材をエコバックに詰める俺を見ながらの蓮見の感想。
 前にぶっ倒れたのを反省してからというもの、俺は真面目に自炊するようになった。お母さんと暮らしていた頃から、家事は俺の担当になっていたから、実はそこそこ上手くできる。前は作る時間がもったいないからコンビニ弁当とかで済ませていたんだけど、体重が減ったりすると蓮見が凄く気にするんだ。心配させたくないから、こうしてちゃんとしてますよアピールしてるわけ。
 でも、ここでも蓮見のお姫様扱いが炸裂しました。

「俺が持つ」

 ニコリと笑って手を差し出す王子様。本当に良い彼氏さんだよね!
 でも今回は俺も頷かないよ。

「良いよ〜こうしてると少し筋肉つくかもしんないし」

 両手に持った荷物を上げ下げしてみる。うん、良い感じの負荷ですね。

「蓮見といっぱいイチャイチャできるように体力つけるんだ〜」

「馬鹿……」

 蓮見は溜息を吐いて、それでも俺の右手を握り込んだ。そして不意をついて、頬にチュッっとリップ音がする。

「お前のことは俺が護ってやるから、何も心配するな」

 笑いながら言った蓮見。でもその目が真剣で、俺の心臓はきゅうきゅう締め付けられてしまった。
 本当はね、もっと強い人間になりたいんだ。何かあった時、自分で対処できるように。蓮見を悲しませたくないし、迷惑を掛けたくない。でも、蓮見には何もかもお見通しなのかもしれないな。ま、表立って認めたりはしないけどね?

「え〜でも俺だって男の子だし、これくらいは持てないとね。ほら、プライドだってあるし?」

 俺がこう言えば、蓮見は俺の人格を尊重して手を離してくれる。それでもやっぱり車道側を歩くのは忘れていなかったけど。
 大切にされてるって、よく分かるよ。言葉でも行動でも、蓮見は俺をすっごく甘やかしてくれる。恥ずかしいし、たまに死にそうになるけど、とっても嬉しいや。
 だから俺は少し前を歩く蓮見の肩に顎を乗せて、ふふと笑った。

「ね、材料買い込み過ぎちゃった。お鍋にするから一緒にどう?」

 上目遣いで様子を窺うと、やっぱり蓮見は綺麗に笑った。

「もちろん、最初からそのつもりだった」

 そして俺の左手からあっという間に買い物袋をかすめ取る。
 もうっ、と非難すると、蓮見は困ったように笑った。

「ごめん。でも手繋ぎたいから、俺の我儘に付き合ってくれ」

 ……そんなことを言われて、どうして拒否できるだろう。本当に蓮見には敵わないや。だってさ、蓮見と手を繋ぐの、俺だって大好きなんだよ?

「寒い〜」

「本当だな。手袋買わないと」

 蓮見の手を握り締めながら、あ、プレゼント決まったかも。なんて考える。

「えへへ、でも素肌って嬉しいな」

「そうだな。できれば今夜は花の素肌にずっと触っていたい」

「ううう、好きなだけどうぞ……っていや待って、ちょっと死ぬかもしんないっ」

 薄暗くなってきたら蓮見のちょっと変態な一面が見え隠れし始めたかもしれない。朝から忙しなく動いていた俺の心臓ちゃん、ごめんなさい。夜も酷使することになりそうです……。

 初めてのデートはすっごく楽しかった。またしたいな。2回目からは俺の心臓も耐性がついているかもしれないし……多分、ね。

【おわり】


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