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鋼の心臓A

 映画の内容なんて入ってこなかった。隣に座る蓮見が手を絡めてきて、ずっと繋ぎっぱなしだったから。緊張し過ぎて手汗凄いんですけど……。

「面白かったな」

「あはは、そうだね〜」

 もう蓮見のことしか考えられなかったよ! 映画はもう1度1人で観に来よう。話が合わないと変に思われちゃうからね。
 お昼は適当な喫茶店に入った。ピークの時間と少しズレていたから、すぐに席に座れる。蓮見はランチセットで、俺はオムライスを頼んだ。昔から好きなんだよね、オムライス。
 大好物を口いっぱいに頬張って、俺はもう幸せいっぱい。だって目の前には蓮見がいるから〜。エビフライを食べる姿も格好いいってどういうことでしょう。いや、可愛いかな? とにかくもう、たまりませんっ。
 内心悶絶しながら食事を楽しんでいた俺だったが、ふと蓮見の視線がある一点に集中していることに気付く。なんだろ、じっと俺の顔見てる。そう思ったら、頬に大きな手が触れた。

「へ?」

 蓮見の親指が俺の唇の端を擦るように撫でてすぐに離れた。そしてそのまま指をペロリと舐める。

「ケチャップついてた」

 そうケロリと言われても、そっかありがと〜なんて言えなかった。もうドッカンと頭から湯気が出たんじゃないだろうか。
 ふるふる震えながら俯いた俺に、蓮見は容赦がなかった。

「花、それ一口くれ」

 それって……いや、考えなくても分かるけど、オムライスでしょうか? うん、好きなだけ食べて下さい。もう全部あげるよ、胸がいっぱいで喉を通りそうにないから。
 皿を押し食べかけのオムライスを差し出した俺。でも、蓮見は違うと笑いながら首を振る。

「食べさせて」

 あーんって、やつですか? うわーん、どうしたの蓮見、キャラが崩壊してるよ!!

「俺のもやるから。な?」

 口元に差し出されたエビフライ。うう、美味しそう。美味しそうだけど、恥ずかしいぃぃ。
 俺は内心で悲鳴を上げながら、カプリとそれに齧りついた。蓮見は満足そうに笑っている。格好良いなぁ、でも、正直もう限界近いです……。

 バカップルの定番。食べさせ合いっこをした俺達。夢のようですね。もう半分意識飛んでましたよ、リアルに。俺はいたたまれなくって、食べ終わってすぐにお店を出た。なんだかウェイトレスの視線が生温かかった気がするけど、気のせいだよね?

 人通りが多い町の中心を歩きながら、ほうっと息を吐く。チラチラ目につく飾りに気分が少し落ち着いてきた。もうすぐクリスマスだから、今日は蓮見へのプレゼントを選ぼうと思ってたんだ。さりげなく話題を振り、蓮見の視線がどこに向くのかをチェックしようと思ったんだけど。
 うう、さっきから蓮見とやたらと目が合う。歩いているんだから前を向いていてほしいんだけど、いや、ほら、恥ずかしいからさ。

「花、さっきから百面相してるぞ」

 そう言った蓮見に頬を抓られる。痛い。でも嬉しい。

「えへ、蓮見が格好良いからうかれてるのかも」

 本音半分です。半分は蓮見の格好良さに困っています。



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