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 ユリアンはアーベルの顔を引き寄せて、固く引き結ばれた唇に触れた。弾力を楽しむように啄んでいると、アーベルが眉根を寄せる。

「物足りないか?」

 ニヤリと笑うと、アーベルが目を見開いた。図星ということだろうか。
 ユリアンはアーベルの顎をとると、手の力を強めた。無理やり開いた口を噛み付くように塞ぐ。上顎を舌で舐め上げ、逃げる舌を絡めとった。アーベルはユリアンの服を掴み、ぎゅっと目を瞑った。

「ん、ん……う」

 ユリアンは漏れ出る吐息さえ勿体ないと、アーベルに息をする暇さえ与えない。角度を変えて何度も合わされる唇。次第にそこからジンとした熱が生まれ、甘い疼きが脳髄を走る。

「ユリアン様っ」

 アーベルがユリアンの胸を押し返した。唇が離れると忙しなく呼吸を繰り返す。濡れて赤みを増した唇を指で撫でると、アーベルがこちらを見つめてくる。

「そんなに熱っぽい目で見るな。我慢できなくなる」

「……では、今日はしないということでしょうか」

「激しい運動はするなと医者に止められているだろう?」

「…………」

 黙ってしまったアーベルの顔を覗き込んで、ユリアンは小首を傾げた。「どうした?」

 潤んでいる漆黒の瞳。ユリアンはドキリとして、アーベルの頬を撫でる。アーベルはその手を握り締め、手の平に口付けた。そして、赤い舌を出して舐め上げる。

「……っ。アーベル?」

 ユリアンの当惑した声に一度は動きを止めた。

「……私がします」

「なに?」

 ユリアンの目の前で、アーベルはぱくりと指を咥えた。ユリアンの背にぞくりと快感が走る。アーベルの口内は熱く柔らかくて、まるで彼の中にいるような感覚がした。アーベルは指をしゃぶった後、舌を出して指の付け根を丹念に舐めた。次第に聞こえ始める水音が室内に淫猥な空気を作り出す。
 ちゅっと音を立て口淫は終わる。ユリアンは息を吐いた。

「……まさか、お前から誘われる日が来ようとは」

 アーベルは気まずそうに俯いている。頬を赤くして羞恥に耐えているようだった。そんなにまでして求められて、ユリアンが喜ばぬはずがない。

「脱げ」

 命じると、アーベルはゆっくりと指を動かしてシャツのボタンを外していく。ユリアンは両手をアーベルの首に添えて、肌に沿うように下へと動かした。首筋、鎖骨、肩、脇、胸、腹、腰。真っ白な包帯を撫で、浮き上がる筋肉を確かめるように指を這わす。鍛え抜かれた体に残る傷跡。他の男がこの体に触れたと思うと、ユリアンの中で怒りや嫉妬がふつふつと湧き出してくる。だが、アーベルの瞳が真っ直ぐにこちらを見るものだから、ユリアンはその激情をいつも押し込めていた。

「アーベル」

 ユリアンが呼ぶと、アーベルはきゅっと口を引き結ぶ。やがて、自分の中の葛藤に勝つと、ユリアンの膝に体重をかけないよう体を乗り上げた。

「よろしいですか……」

「ああ」

 自分から誘ったことが恥ずかしいのか、アーベルはユリアンから視線をそらし、ユリアンに身を寄せる。手探りで寝間着のズボンからシャツを引き抜き、腰紐を緩めてユリアンの肌に触れた。大きな手がそっとユリアンの中心を包み込む。

「ん、優しくな」

「はい」

 アーベルの長い指が絡みつき、根本から先端までを優しく撫でる。最初は遠慮がちだった手つきが、ユリアンが熱い吐息を漏らした途端、少し大胆なものになる。根元を押さえ尿道を指の腹で刺激する。アーベルは夢中になってユリアンを追い立てる。それがユリアンにはとても可愛らしく見えた。
「はぁ……そろそろ解すか」

「え? あ、だ、駄目ですっ」

「今更恥ずかしいのか? 命令だ、大人しくしていろ」

 ユリアンはアーベルの腰を引き寄せて、服の中に手を差し入れる。命令に忠実なアーベルが動かないのを良いことに、引き締まった臀部を円をかくように撫で回した。

「んっ」

「気持ち良いか?」

「そ、んなことは……」

「ふふ、じゃあこっちにしよう」

 段々手をズラしながら、双丘の割れ目や太股の付け根を撫で回す。その時、指先がアーベルの前に触れた。まだ触ってもいないのに固くなり始めた感触がし、ユリアンはにやにや相好を崩す。アーベルは恥ずかしそうにふいっとそっぽを向いた。

「今日は随分感じ易いんだな……」

 熱っぽく呟き肌蹴た胸の突起に舌を這わすと、褐色の肌が粟立った。ツンと固くなった乳頭に歯を立てれば、アーベルがユリアンの髪をやんわりと引っ張った。

「で、殿下っ」

「なんだ、邪魔をするな」

「んんっ」

 まるで幼子が母の乳を欲するように吸い付く。唇で挟み込み、舌で丹念に舐めた。両手はアーベルの体を撫で回し、逃げようとする体を押さえつける。
 アーベルは目を瞑って声が漏れるのを我慢していた。けれど感じているのは明白で、アーベルの前が膨らんで確かに主張し始めていた。


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あきゅろす。
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