9
ユリアンはアーベルを寝かせ、腰の下に枕を入れた。膝を立たせ、自分でも体を持ち上げさせて、双丘の窄まりに指を這わせる。
「んっ、はぁっ……殿下ッ」
「…………」
突くと震えるそこに、潤滑油を塗りこめながら、ゆっくりと指を埋め込んでいく。アーベルが力を逃がそうと深呼吸するのに合わせて、どんどん奥に入り込んだ。
「アーベル、触ってやるから、足を開け」
「そ、れは、結構です……」
何を恥かしがっているのか。抵抗するアーベルに再度「開け」と命じると、彼は震えながら膝を開いた。また硬くなった中心を握り込めば、呼応するように穴も収縮する。
「私の指を締め付けて離さんぞ。こっちは素直で可愛いものだな」
わざと口にしてやれば、アーベルは目を瞑ってしまう。それがせめてもの抵抗なのだ。ユリアンの前では、アーベルの体は容易く陥落してしまう。
「ん、……ッ」
「良いか?」
「やめ……アッ!」
アーベルが背を仰け反らせ、黒い髪がシーツの上に散らばる。ユリアンは今突いた場所を、何度も爪で引っかいた。その度に、アーベルの体が可哀想なほどびくびく跳ねる。
「ふっ、っ、……ゆ、ユリアン様ッ」
逃げようと無意識に体を捩り、アーベルが涙を流す。ユリアンも我慢ができなくなって、そっと指を引き抜いた。アーベルの両膝を折り曲げ、胸についた形で固定する。上から見下ろすと、揺れる瞳と目が合った。
「殿、下……」
「褒美だ、しかと味わえよ」
「……ん、くぅッ」
ズンと痛みが下半身に走り、アーベルは悲鳴を噛み殺した。痛みに顔を青褪めさせて、それでもユリアンを受け入れようと、懸命に息をする。何度やっても慣れないアーベル。その初々しさと妖艶さに、ユリアンはどんどんのめり込んでいった。
「アーベル、アーベル……ッ」
腰を掴み、がつがつと叩きつける。ベッドがギシリと鳴いて、交わる2人の体を支えた。
「ハァッ」
根元を強く締め付けられて、ユリアンは息を吐いた。ポタポタと顎を汗が伝う。引き締まった両膝を持ち上げゆっくりと腰を引きながら、ユリアンはアーベルの顔を覗き込んだ。すると、アーベルの腕が求めるように、ユリアンの首に回される。
「ユリアン、様ッ。お、お慕い」
泣き腫らした目が、必死にユリアンを探す。どんな光をも吸い込む、夜の闇よりも触れがたい瞳が。
「お慕い、しております……っ」
いつも無愛想で憎まれ口ばかりの彼が、こんな時だけ素直になる。本当に、反則であるとユリアンは思う。
「愛いやつめ……!」
「んっ」
ぐちりと己を押し込んでから、乱暴にキスをした。中でぎゅうぎゅう締め付けられて、ユリアンのものがどくどく脈打つ。アーベルの中は口も後ろも熱く蕩けていて、ユリアンは何度も出入りを繰り返し肉を割った。
アーベルは彼の熱がおさまるまでその名を呼び、彼を受け入れ続ける。その様子が、またユリアンを煽った。
すべてが終わった頃には、もうアーベルは動くことも億劫になり、ユリアンが呼びかけても微動だにしなかった。ぐったりとベッドに体を横たえて、浅く呼吸を繰り返すばかり。閉じられた瞳の上で、苦しげに眉根が寄せられている。
ユリアンはアーベルの髪に触れて、彼の薄く開いた唇を指でなぞった。
「すまん。疲れたか?」
「……少し」
男の彼にとって、自分を受け入れることがいかに負担になっているかは、ユリアンにだってよく分かる。アーベルが初めての相手であるユリアンは、情交の経験や知識など無いに等しい。求めるあまり、ついアーベルに無理をさせてしまう。
けれど、自分が王子であるから、アーベルは何も言わず抱かせてくれる。ユリアンはそれが嬉しくも、少し悔しいと感じる時があった。
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