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覇気がねぇ!4


 鉄太はどかりと椅子に腰を下ろし、テーブルに頭を突っ伏した。その金に輝く頭をみんなが見つめた。
するとポツリポツリと、鉄太が事の次第を話し始めた。

 テストで良い点がとれた。
 教室に乗り込んだら、相手は自分を屋上に連れて行って。意味が分からないとキレてその場を去ろうとしたら、いきなりキスされて。あまつさえ自分がご褒美だと言い放った。しばらく意味が理解できなかったが、気付いたら絶叫して、相手を振り切り逃げてきた。
 それから一度も会っていない。

「俺をやるって、マジで意味分かんねぇ……」

 心底参っているのか、鉄太の声に元気はない。喧嘩で負けてもここまで凹んだ事はなかったのではないだろうか。

「まぁ、そのままの意味だよね。そいつは鉄太に惚れてるんだよ、きっと」

 答えたのは尋央で、清貴と光はまともに返す事もできなかった。鉄太は顔を上げ、尋央に視線を移す。その瞳は困惑の色が濃い。

「花里も俺も男なのに?」

「その人にとって性別なんて関係ないんでしょ」

「からかってるだけかもしれねぇんだぞ!?」

「冗談で男にキスなんて俺なら死んでもしないよ」

 強く言い切られ、鉄太は言葉を詰まらせた。

「で、でも、そいつが本当に鉄の事好きでも関係ないじゃん。鉄が相手にしなきゃ良いだけだよ」

 光が同意を求めるように鉄太を見た。だが鉄太の表情は晴れない。言葉を探すように、視線が定まらない。
 それを見た尋央が得心がいったように笑った。

「分かった。鉄は満更でもないんでしょ」

「は?」

「だから、その秀才君の事。好きかもしれないんだ」

 雷に撃たれたような衝撃に、鉄太は目を見開いた。自分が、花里を、好きだって?

「おいヒロ、いい加減な事言って鉄を惑わすな」

 清貴が剣呑な声を出す。普通の人間なら竦み上がるそれにも、尋央はニヤリと笑って睨み返す。

「何で? 男にキスなんかされたら、俺ならぶっ飛ばしてるね。それでキレはしても、うだうだ悩んだりなんてしない」

「ただ混乱しててそんな余裕なんて無かっただけだ。今だってそうだ。その証拠に、鉄はそのホモ野郎に靡いたりなんかしねぇよ。なぁ、鉄?」

「鉄、よく考えなよ。後悔したくないだろう?」

 二人の問い掛けに、鉄太自身答えを出せなかった。

「俺、は……」

 どうしたいんだ――


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