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「ケイ」
「けーちゃん!」


低くて甘く掠れた殺人ボイスと、少し高くてハスキーな声がした。相変わらず色々と濃い人たちだなあと密かに頬を緩めた俺こと高梨慶一は、一応このお話の主人公です。


「なにー」


対する俺も、緩くて甘いお声が大好きなんですってチワワちゃんに力説されたので、他人事じゃないみたいなんだけど…自分ではよくわからない。


「まさか帰るんじゃねーだろうな?」
「僕疲れたあ。手伝えしー」
「そのまさかだよ、会長。アキは自業自得でしょー」


ふんふんと鼻歌を歌いながら自分の席を整理した俺は、帰り支度もばっちりだ。
舌打ちと欠伸とサインを器用にくりかえす会長と、ぶーたれるアキを横目にポケットから携帯を出す。
ぱちんと開いた画面は8時半を指していて、あと十数分で一限目が始まるというなかなかいいタイム。

一限目は数学で担任だから、出ないと俺は食われてしまう。ホストのような担任曰く「お前をさ、超泣かせてーんだ。俺は」だそうで、素敵に立派な変態さんだ。


「お前んとこのヤツは締まりがいいからな」


ああ、ここにもそれがナチュラルに一人。
ぼやく会長をアキがジト目で見やってるけど全く動じてない。さすが

ちなみに会長たちは、俺が毎日授業に出てることは知らない。会長の言っだお前んとごっていうのはきっと俺の親衛隊のことで、いつの間にか俺はその子たちと日中夜遊びまくっているということになっていた。
つまり、中坊の初め頃から゙軽そゔと言われ続けた容姿は未だ健在のようで、生徒会権限でサボり続ける不良兼問題児(主に下半身の)と会長含めほとんどの生徒にそう解釈されているらしいのだ。

とはいえ俺に関して飛び交うあらぬ噂を否定しない俺も悪いんだけど。訂正するのもまあ面倒だからいいかな、ぐらいの心意気です。俺は。


「じゃ、ガンバってー」


ひらひらと軽く手を振って生徒会室の扉に向かうと、直前にケイと呼び止められて振り向いた。


「スズに会ったら来いって行っとけ」
「ん?」
「あ、会長押し付けるんだ。れーちゃん気の毒うー」
「居ねえヤツが悪い」


話が見えない。
俺を置いて話始めてしまった二人に、俺の頭上にはクエスチョンマークがたくさん飛んでいる。


「何のはなしー?」
「転校生ー」
「明日のな」
「ふーん」


初耳だった。
けど大して興味も沸かなくてスルーした。
そんな俺をよそに、どちらがスズ…もとい副会長にそれを言うかでじゃんけんまで始めてしまった二人を見て、なんとなくため息をつきたくなった俺だった。



その後結局会長が勝って、アキが副会長に素敵な笑顔で「急すぎやしませんか?」って説教されたのは…また別の話。





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あきゅろす。
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