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その理由は9


「このメンバーで任務なんて、初めてなんじゃねぇか?」

にたりと口角を釣り上げて、ジャルは目の前のメガネの青年に視線を合わせた。その様子はこれからのことが楽しみで仕方ないかのようで、そわそわと落ち着きがない。
事実、退屈な単独任務が続いていた中で仲間と共に任務ができることはジャルにとって喜びであった。

「そうだね。俺はあまり気分は乗らないんだけど」

鈍く光を反射させたメガネを中指で押し上げ、ダズのテンションは少しばかり低めだ。

「んだよ?俺様と一緒の任務が不満だってのか?まあ、俺だって野郎なんかより女の子のが数倍良いっていうのが前提だけどな」

「……はぁ」

「てめぇ!なんで溜息なんだよ!」

「ああもう五月蠅い五月蠅い。分かったから」

ダズの適当極まりない態度は気に食わないものの、彼の気が乗らない気持ちも分からなくはない。

「……チッ」

舌打ちの方向に視線をやると、元凶である少年が何時にも増して不機嫌そうにこちらを睨んでいた。

何がそんなに気に食わないのか。ジャルにはさっぱりわからないが、迂闊に触れれば殺されそうなくらいの殺気立ったオーラを放っているディルには掛ける言葉も見つからず。はたして今回無事に任務を終えることができるのだろうか、そんな不安さえ感じさせる幕開けとなった。

今回の任務の内容は、「オークションに参加する依頼人の護衛および会場への潜入」である。依頼人をオークション終了まで護衛しつつ、オークション内部に侵入しコアの情報を得る。目的地は夜の街と呼ばれる、首都の地下に影のように広がる街――トラヴィス。法の効力の届かない、不法地帯であるその街は犯罪者や貧しい人間のたまり場となっている。そこで定期的に開かれるのが闇オークションだ。闇の名を冠するように、出品される者は麻薬であったり人間であったり、日の目を浴びることができないようなものばかり。しかしオークション開催にあたってそこに集まる人々は、日の下に出られないような人間だけではない。物好きな貴族たちが珍しい商品を求めて、はたまた日常では得られないような刺激や背徳感を求めて、多く集まってくるのだ。今回の依頼人、ハワード・リックフォルクもその類の人間であった。

ふくよかな体系と、ふてぶてしい態度、傲慢な物言い。「嫌味な金持ち」を絵にかいたような人物であった。

「なんだ、三人だけなのか?頼りないな。下賤な野犬どもが、ちゃんとワタシを守れるのだろうな?」

やけにふっさりした眉毛を歪に寄せて、リックフォルクは見下した様子だ。本部にやってきた依頼人との初の顔合わせの、第一声がこれである。



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あきゅろす。
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