その理由は7 「助け合う?ふざけるな。大体、いつも余計な荷物付けやがって。あいつは何を考えてるんだ。俺一人で十分だ」 「レオなりの考えがあるんだって。それに……余計な荷物なんかじゃないよ?みんな仲間じゃんか」 ディルの言葉が癇に障ったのか、言葉を返すリサは少しばかりむっとした表情。 それすら気に留めずに続けて吐き捨てる。 「仲間?馬鹿なこと言うなよ。お前らを仲間だと思ったことは一度もない。ただ利用しているだけだ。これ以上、慣れ合うつもりもない」 「なっ……」 吐き出された言葉には、嘘偽りはない。リサは言葉をなくして見開いた両の目でその翡翠の双眼を見つめる。 沈黙。しんと、張り詰めた空気が二人の間に流れる。 「バカ!」 ばちん、鈍い音とともにリサが右手を振り上げた。 突然の衝撃と、目の前の少女の行動にディルはわずかに動揺した様子でリサを見つめながら、熱を帯びた頬に手を当てる。 「そんなんだからいつまでたっても単独任務任されないのよ!!ディルのバカーっ」 「んだと……!?」 声を張り上げ思いっきり叫んだリサは顔を赤く染め、肩を上下させている。対するディルも一方的に言われて引き下がるわけなどなく。 「役立たずのお前に言われたくない。大した力もないくせに……。自分が一番のお荷物だって、分かってるのかよ?それに、お前が作った変な機械、あれが爆発さえしなければ俺は……!」 そこで、言葉が詰まる。発する言葉がなかったわけではない。目の前の少女を纏う空気が、大きく揺らいだからだ。いつも得意げに爛々と輝いているはずの赤の瞳が震え、その笑顔を絶やさないはずの表情が歪んでいる。 「そうよね。分かってるわよ……。あたしなんてどうせ役立たずのお荷物よ!悪かったわね!!」 困惑に、思考が鈍る。強く握りしめられた掌が震えている。予想外の、見たことのない表情。ディルは呆然とそれを眺めるしか出来なかった。 「……バカっ!」 言い捨てて、リサは薄暗い廊下を階段の方へ走り去ってしまう。 「……なんなんだよ」 ひとり残されたディルは彼女の真意が分からず、ただ暗闇へ消えていくその背中を見つめるのであった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |