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その理由は5

瞬間、ディルの目の色が変わる。後方で事の行方を見守っていたリサも、『コア』という言葉にぴくりと反応する。
思い出されるのは、ホドリ村での任務。再生する猛獣たちだ。奴らの無限の再生には『コア』という物質が作用しているらしい。そしてそれは、自然界では見られることのない現象。万物の断りを無視した事象なのだ。その後はリサに詳細を調べてもらっていたが、有力な情報は手に入らないままだった。

「――これを見て」

ミリカはレオの作業机上から一冊の本を取ると、分厚いそれに張り付けられた付箋を目印にページをめくる。

「近々開催されるオークションの出品一覧よ。ここのページ、オークションの目玉となる商品が記載されてるのだけれど……」

細い指が二色刷りのページの一部分を指す。そこに目をやると、気がかりな一文が目に飛び込んだ。

「再生する獣……」

「そう。コアを持つ生物の特徴に一致するでしょう?これはなかなか大々的に行われるオークションだから、情報の信憑性は高いわよ」

にやりと口角を歪ませてミリカはさりげなくディルの瞳を覗き込むようにして見つめる・

「信じてくれるかしら?」

「……!」

まるでこちらの全てを見透かすような深く沈んだ藍の瞳に言いようのない寒気を覚えて、ディルは反射的に彼女から視線を反らし、半歩身を退ける。こちらの反応を面白がっているのか、からかっているだけなのか、笑みを浮かべる彼女の表情からはその意図が読めない。不信感は募るばかり。拒絶の意を込めてディルはミリカを睨む。

「――このオークションに潜入すれば、再びコアをもつ生物と接触できる可能性は高いわ」

何事もなかったかのようにミリカは続ける。そんな彼女を何も言わずに見つめていたレオは、それに付け足すように口添えをする。

「それでまあ、なんともタイミング良くオークション参加者からの依頼が来てるんだよねー」

一綴りの資料を取り出すとおもむろにそれを読み上げる。

「んーっと、まあオークション会場での護衛任務だな。詳細は……めんどくさいから後で確認してくれ」

「レオー、職務怠慢よ?説明くらいちゃんとしてあげたらどうなの?」

「あたしもメルベルに同意―」

溜息混じりにメルベルが口を出すのに乗っかってリサもまたからかうような口調。それを受けたレオはことさら面倒そうに、両腕を掲げてお手上げのポーズをとった。


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