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その理由は4


相変わらずの薄暗い廊下を通り、無機質な扉をノックして返事を待たずにそれを開く。
扉の中に足を踏み入れると、珍しくいつもと比べてその部屋は整頓されていて、不思議に思うと同時に部屋の主の他に見知らぬ姿があることに気付いた。

「おうー。ディルか、もう起きて大丈夫なのか?」

この前とは僅かにデザインの異なる妙な帽子を深く被っているレオが、彼お気に入りの椅子に腰かけながらこちらに気付いて右手で挨拶する。

「あたしもいるわよー」

ディルの後ろからリサがひょっこりと顔を出す。

「おお、リサも。どうした?」

レオが問うのを耳に入れながらも、ディルはそれに応えずに部屋に佇む女性を注視した。
部屋の電灯を受けて淡く光る、背中まで伸ばされた銀色の髪。彼女の纏う落ち着いた雰囲気は、大人の優美さを感じさせる。長い睫毛が細められた瞳とともに揺れ、静かに笑みを湛えた唇が美しい曲線を描いている。

「こんにちは」

その外見に見合った、とでも言うのだろうか。凛とした声が部屋に響く。きっちりとした出で立ちのその女性は、整頓されてはいるものの相変わらず煩雑したこの空間には似つかわしくない存在だった。

「……こんにちは!」

緊張気味なのか、少々声を上擦らせてリサが挨拶を返した。
その様子を可笑しく思ったのか女性がくすりと微笑んだ。嫌味な感じではなく、寛容さを含んだ優しい笑みだった。
だが、そんなことにはお構いなしの刺々しい少年の声が響いた。ディルだ。

「誰だ?」

見知らぬ人物。彼にとってはそれだけで十分警戒するに値する。感情を込めないまま冷たい目線を彼女に送る。睨みつけるような視線。それをうけても、彼女は微笑みの表情を変えない。

「――彼女はミリカ。俺の旧友だよ」

座ったままのレオが呑気な口調で紹介すると、それを受け「よろしくね」とミリカ。

「へぇー、レオに旧友なんていたんだねー。意外」

紅の瞳を大きく開いて感心した様子のリサに、レオは苦い表情。

「リサ、それはどういう意味かな?俺にだって人脈くらいはあるんだよ?」

「ミリカは、任務の際の情報を提供してれたり、私たちが活動する上でずいぶんとお世話になってるのよねー」

レオのすぐ隣でふわりとメルベルが姿を現す。人形のほどの大きさの少女の背中に、純白の羽根がはためく。


レオやメルベルの話を聞くに、彼女とは親しい間柄のようだ。だからといって、ディルが彼女を信用するかどうかは別の話だ。敵意をそのまま表したような視線に、ミリカは困ったように表情を歪めた。

「そんなに警戒しないでよ。私はあなたの敵ではないのよ?」

「そうそう。ミリカは情報を持ってきてくれたんだよ」

「情報?」

ディルがそちらを見ると、レオは「そう、情報」と頷いた。
一体何の情報なのか。それを問う前に、ミリカがその唇を薄く開いた。

「あなたは良く知っているでしょう?コアを持つ、生物の情報よ」


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あきゅろす。
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