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はじまりの来訪9


「ディル。ありがとう。助かったわ」

猛獣の最期を確認すると、ディーナは銃を収納してディルへと礼を述べる。

「……いや、別に」

そっけない返事だけを返して、ディルは自身についた猛獣の返り血を拭う。


嫌に冷静な二人を視界の端に写し、その横に広がるおぞましい光景にベルトは思わず息をのんだ。あまりに一瞬でわけが分からなかったが、辛うじて原型をとどめた猛獣の残骸たちの凄惨な末路に思わず吐き気が込み上げてくる。その場に座り込んで必死にそれを堪える。と同時にまたもや混乱に陥った頭を必死に整理しようと試みる。

――なんだかもう訳が分からないことが多すぎる。



………気持ち悪い。

この光景を前にして、あの人たちは何故こうも平然としていられるのか。そもそも、何の躊躇もなく猛獣をばらばらにできること自体ベルトには理解できない。本当に、彼女らは一体何者なのか。
もしかして、自分は厄介なことに関わってしまったのではないか。

整理しようとした思考はますます訳がからなくなり、蘇る光景にただ気持ち悪さを覚えるだけだった。



「ベルト君!大丈夫?」


うずくまっていたベルトにディーナが駆け寄ってきた。

「だ………っ、だいじょ……ぶ、……です」

顔面蒼白のベルトだが、必死に笑顔をつくり彼女に答える。明らかに大丈夫ではないのだが、これ以上迷惑をかけるわけにはいかない。それに、やはり彼女を信用していいのか、ベルトは判断しかねていた。



「…ごめんね。ベルト君」


ベルトの横にしゃがみ込み、ディーナは心配そうにベルトを見つめる。



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