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その理由は1

ベルザークへの視察任務から一日、ディーナはひとりとある建物のなかにいた。白塗りの壁に清掃の行きとどいた綺麗な廊下。訓練場を備えた広大な土地を有し、平和な田舎町の中心部に堂々とそびえる、ここはザルカンタ軍東部支部。軍が統治するこの国は四方に広がった領土を持ち、東西南北、そして中央と5つに区分される。広域全ての治安を維持するため、軍部は中央に本部を置き四方に支部を置いている。
ハンターの本部があるのはザルカンタの東部に当たり、軍との依頼事のようなやりとりはそこを介して行われることがほとんどだ。そして今日、ディーナがここを訪れたのはそのためだ。前回の任務で手に入れた情報を直接軍へと渡す。これをもって、はじめて任務の終了となるのである。

見慣れない風景。当然建物内部には軍人しかいない。すべての人物が軍服をまとい忙しなく動いている中、一見すると一般人にしか見えないような少女が歩いている光景は少し異様なものである。きょろきょろと周りを見回しながら、先導する軍人の跡についていく。もの珍しげな視線が彼女に送られているのを感じながら、ディーナの向かう先はここの最高責任者の下。東部支部を統治する支部長の部屋だ。

「こちらが、支部長の部屋になります」

逆立たせた銀色の髪に、赤メッシュという独特の髪。振り向いた際にそれを少しだけ揺らして、先導していた軍人が告げた。
コンコン、と軽くノックをし、「失礼します」の声とともに扉が開かれる。

大きな窓を背に、横長の机がこちらに向けられ置かれている。本や資料でごった返したお世辞にも整頓されているとは言えないそれに備え付けられた椅子に座って、太陽のような金髪の髪をしたやや幼い顔立ちの男性がディーナを出迎えた。


部屋の手前に置かれた、接客用のソファへと通され、先程の部下からお茶を渡される。

「御苦労、ルカ。下がっていいよ」

にこりと笑うと、部下に退室を促す。ルカと呼ばれた軍人は、少しだけ心許なそうな怪訝な表情を浮かべつつ、一礼とともに部屋を出ていった。

「さて、久しぶりだね」

向かいのソファに座って、笑みとともに言う。無邪気な笑みによってその外見は一層幼く感じられる。

「そうですね。お久しぶりです、ハルさん」

ディーナは笑顔で持って彼に応える。

「ループ中将がここにいた時以来だから、もう大分前のことになるのか……にしても、大きくなったね」

「そうですね。でも、ハルさんに大きくなったね、なんて言われると……なんか違和感があります」

「はは、確かにねー」

取りとめのない会話を数分。

彼は、ハル・グレイジオン。現在ザルカンタ軍東部支部の支部長という役職に就いている。ディーナと彼は顔見知りである。だが、実際会話をしたのは数回ほどで、もうずいぶん前の事だ。それでも温厚で機知に富んだ彼と一緒にいるのは楽しかった記憶がある。

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