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月を冠する国3

「俺も連れてってよ!頼むって」

「異国の地って、この町ってもともと一つだったんだろ?行き気してたんなら道くらい分かるだろ」

「状況が違うだろ……!?」

マサがちらりと目をやる、その方向を見ると武装した軍人の姿。
国境付近の警戒態勢は厳重にされているのだろう。うかつな行動はとれなそうだ。

「な?武装した軍人がうろうろしてんだぜ?ベルザークから来たなんてばれたら間違いなく殺されるよな、な!そんなのやだし、記憶が対価なんだろ?なら最期まで付き合ってくれてもお釣りがでるんじゃないか?」

先程うっかり敵国出身者っぷりを露呈しそうになっていた奴が何を言う、と言いたげな顔でディルはすがりつくマサを「離れろ」と一蹴する。
だが、確かに危険かもしれない。この任務は密入国だ。マサが捕まり、それがばれたら軍人たちの調査の目が自分たちに向く可能性は高い。ならば、任務終了まで目の届くところにマサを置いていた方が良いだろう。

「そうだね。マサさんが恋人さんに会えるまで、協力するよ」

「ほんと?ディーナちゃん!」

マサの表情がぱあっと華やぐ。対応するように、彼を押しのけるディルの表情は曇っていくのだが。

「そうですね。町での情報収集をしながら、恋人をさがす事はできますもんね。まあ、私情をはさむのは良くないですけれど、少し憧れますし。離れ離れになった恋人との再会って」

リイラもなんだかんだで賛成のようだ。

「わー、リイラちゃんもありがとな!」

「それじゃあ、私は情報屋さんの方へ行くけど……」

「私は町での情報収集をします」

「わかった、ディルは?単独行動は駄目だよ」

「俺は……」

「ディルはこっちだ!俺たちと一緒!」

言いかけた言葉を遮って、マサがディルの肩を掴んで引き寄せる。
突然の行為にぎょっと目を見開き、嫌悪を前面に押し出して拒絶するディルをものともせずに、マサは揚々としている。

「ほら、リイラちゃんと二人っきりだといろいろ誤解を生んじゃうだろ?だから」

「離せ……!」

マサの手を払いのけると、ディルは鬼の形相でマサを睨む。

「怖いって!そんなに嫌がんなよー」

へらへらと笑いながらさらりとかわすマサ。

「それじゃあ、私が情報屋、三人が町での情報収集だね。せっかく通信機があるわけだし、話が終わったらこれで連絡するね」

すると「今度は落とすなよー」とマサが茶化すのを、「誰のせいだ」とディル。すっかりマサのペースにのまれているディルが、珍しくて、すこし微笑ましい。口元が綻ぶ。と、同時に少しだけマサがうらやましい。彼のそんな表情を引き出せてしまうのだから。

「それでは、あとでまた落ちあいましょう。気をつけてくださいね」

「うん。それじゃあね」

別れた三人の背を見送りながら、ディーナは単身情報屋へ向かうのであった。



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