国境の町8
「別途に料金ヲ支払ってイタダケレバ、他ノ情報モオハナシシマスヨ?気にナル殿方ノ行方トカ、貴族の屋敷が襲撃サレタ理由トカ」
「!」
「あはは、大丈夫です」
冗談のような口調に笑って返したディーナだが、途端にリイラの目の色が変わったような気がした。一瞬だけ身を震わせ、顔を伏せたまま視線だけで情報屋を見つめている。
「リイラ?」
「はい?なんですか?」
思わず声をかけてみたが、存外普通の反応だ。気のせいだったのだろうか。慌てて「なんでもないよ。」と返したディーナを逆に不思議そうに見つめている。
「他に聞きたいことはない。行くぞ」
ディルが立ち上がると、それにつられる形でディーナたちも立ち上がる。
その様子に「オカエリデスね」とつぶやくと情報屋は先ほど入ってきた扉とは反対側の扉を指さす。
「元来た道カラハ帰レナイヨウにナッテイマス。オカエリはアチラノ扉からドウゾ」
指さされた扉は入口同様古く錆びついているものの、まだこちらの方が幾分新しいようだ。室内の照明を受けて鈍い光沢をはなっている。
扉へ向かい、開く。キィとちいさな音とともに外の景色が目に入る。来た道と同じ薄暗い地下道が待ち構えている。
「手順ハ先ほどの説明ドオリデス。アリガトウゴザイマシタ。お気をツケテ」
手を振る情報屋に見送られ、一行は再び鬱蒼とした地下通路へと歩みを進めた。
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まぶしい日差しと、人々の声がやけにうるさく感じる。
地下の階段を抜けて戻ってきた地上はやけに久しぶりの場所のように感じられた。
「んー、開放感!やっぱり地上が一番だね」
眩しさに目が慣れてしまえば、太陽の日差しも心地よい。やわらかい風が頬を撫ぜる。暖かな空気に目的を忘れてひと眠りでもしたくなる。ディーナはひとつ伸びをしてしばしの開放感に浸る。
「そうですね。暗い地下は息が詰まります」
「言ってる場合か。早く先に進むぞ」
この太陽の暖かさも爽快たる地上の風もディルにとっては煩わしいだけのようだ。呆れたように吐き出すと先を急ごうとする。
「待ってよ。これから先もっと息が詰まるんだから、少しくらい休憩しましょ?」
「急ぎすぎるのも良くないですしね」
この先進んでしまえばこの世界の裏に飛び込むことになる。ハンターという立場上ある程度の現実は見ているが、本当の裏の世界を見るのは初めてだ。レオが計らってくれていたのかこういった仕事は今まで全く回ってくることがなかったのだ。一歩間違えば命の保証はない。戦場とは全く別の意味で暗く深い世界に踏み込むのだ。少しばかり時間の猶予があってもよいのではないか。
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