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国境の町7
警戒を露わにして驚く三人にお構いなく、情報屋は指を立てて強調するように話し出す。

「注意点デス。ソノルートは裏ルート。裏ハ黒ーイ闇の世界デス」

半音下がった声色。表情は相変わらずの笑い顔だが、その雰囲気は一変している。面のような笑い顔が緊張感とは反していてそれがまた不気味さを生んで、寒気すら感じる。情報屋は続ける。

「光ノ届カナイ世界デハ、何が起キルカワカリマセン。ソコデ何ガアッテモドウスル事もデキマセン。命ノ保障モアリマセン。自己責任デス」

重い空気に空間の閉塞感があいまって、胃が締め付けられるような緊張感が部屋一体に蔓延する。息を呑む。

「デスカラ、大キナ問題ハ起コサナイヨウニ、ナルベク目立たナイヨウニ、気ヲ付けテクダサイね」

重い言葉の内容とは正反対の表情をうかべ、といってもそのほとんどは長い前髪に隠れて見えないが、情報屋は唐突に乗り出していた身を戻す。勢いよく椅子へと腰かけ、同時に脚が地面とこすれ軋む音がする。

「アト、コノ話は他言無用ですヨ。闇ハ日の下ニ晒シテハイケマセン。言ってシマッタラ、ドウナるカ……ワカリマスネ?」

瞬間、隠れていた情報屋の瞳にギラリと鈍い光が宿った気がした。威圧感。これは脅しではない、忠告なのだ。本能的に感じ取るとごくり、唾をのむ。ここにいる三人は闇の世界に触れたことなどはなかった。その片鱗にはじめて触れることで、世界にはまだ見ぬ闇が広がることを思い知る。空気にのまれて呼吸が難しく感じられ、言いようのない居心地の悪さを感じた。

「マア、言ワナイ限りハダイジョブデスヨー!」

次の言葉を発するときには、何事もなかったかのように情報屋は元の笑顔面に戻っていた。あまりに急激な変化にまるで夢でも見ていたような気分だ。

「無事ムコウニ着イタら、ノーレとイウ店ヲ訪ねてクダサイ。ソコにはムコウの情報屋ガオリマスカラ、ベルザークの貴重ナオハナシを聞カセテクレルデショウ。国は違エド、同じ人間。怪シイ動きサエシナケレバ捕マッタリしないデショウ。大丈夫デス」

「……はい。わかりました」

あれほど威圧されてから大丈夫などと言われたところで、まったくもって大丈夫なものか心配極まりないところだが。一応返事をしてディーナは内心苦笑する。
と、情報屋はおもむろに立ち上がりニコリと笑う。

「ワタシが話せル情報ハココマデデス。料金分ノ情報はオ話シシマシタヨ」

「はい。ありがとうございます」

料金はあらかじめレオが払ってくれているらしい。闇社会に通ずる情報を教えてもらえる程だ。いったいどれほどの金額なのか、考えてだけで眩暈がしそうだ。そしてそれほどの金額をレオがどうやって用意しているのか。それもまた謎のひとつである。



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あきゅろす。
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