国境の町6
「改めマシテ、ハジメマシテ。ワタクシ情報屋のゲハイムニス・ウォルとモウシマす。ココのオーナー、情報屋デス」
向かい側の立派なソファに腰掛けると、情報屋はにこりとほほえんだ。外見こそ異様だが話は普通にできるようだ。
軽く座礼して挨拶に応えると、本題に入る。ディーナが状況を説明しようと口を開く、そのまえに情報屋は指を立てた。
「知ってオリマス。ベルザークヘ渡リタインデショウ?レオサンから聞イテマスヨ」
「レオさんを知っているんです?」
「モチロン、贔屓してモラッテマスカラね」
知らなかったことだがこれで合点がいった。不思議と情報に通じていたレオの情報源はここだったのか。リイラはうなずく。それにしても流石はレオの知り合いというか、不思議な人物だ。類は友を呼ぶとはこういうことなのだろうか。
いずれにせよ、こちらの事情を知っているのなら話は早い。
「ベルザークにはどうやって行けばいい?」
「正直な話、ベルザークヘ渡ルコトハ現在不可能デス。地上ノ道ハ封鎖サレテオリマス」
「じゃあどうすれば……」
いきなり道が断たれてしまった。リイラは困惑の色を浮かべる。だが情報屋の表情はにこやかだ。
「何か手があるんですか?」
「普通に地上ヲ行ケバ、駐留スル兵士に撃タレテお陀仏デス。デスが、ソノ為の情報屋デス。道ハアリマス」
「何だ。それは?」
「ヒミツの裏ルートデス」
「裏ルート!」
「そこから行けってことか」
「ハイ」
情報屋は口元に笑みを張りつけたその表情を変えない。裏ルート。一気に危ない世界に入ってしまったような気がしてディーナ、リイラは息を呑む。
「それは、どこに?」
「ソチラノ扉カラ出た通路ヲ更に行ッタ先。地上ヘト出てスグの路地ヲ奥ヘト進ンダ酒場カラ行けマス。コチラガ地図デスヨ」
そう言うと情報屋は手書きの地図を差し出す。小さな紙に書かれたその地図は酒場までの行き方を詳細に記してある。
「コノ地図はあとで燃ヤシテクダサイね。ソレト、酒場にツイタラコレヲ店主ニ見せテクダサイ。話ガ通ジるハズデス」
情報屋は更にテーブルの上に証書を置く。一見何の変哲もない紙によくわからない言語が書かれている。おそらくこれが裏ルートへ行くためのパスのような役割をするのだろう。
「アト、ヒトツ」
ディーナがそれらを受け取ると、情報屋は急に身を乗り出す。
「ひゃっ!」
ぬっと半身を大きく傾けて眼前に迫るその姿に思わず小さく悲鳴がもれる。
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