森の古城と仲間たち10 乗りすぎると厄介なのであまり調子に乗らせたくはないが、感謝はするべきなのかもしれない。ディーナがその旨を告げようとすると、「ただ……」と口ごもる。 「機械自体が高温になったり、変な音が出るような時は……すぐに手放した方が、いいかなー、なんて………」 語尾になるにつれ小さくなっていくその声を、ディーナは聞き逃さなかった。 「結局爆発するんじゃない!」 「いや、まだするって決まったわけじゃないよ!その恐れがあるってだけ!」 「そういう不安要素があるものを人に持たせるんじゃないわよっ」 「大丈夫よー。死にゃしないって!」 「そう言う問題じゃない!」 「……ほら!三人とも明日早いんでしょ!?なら早く部屋に戻って休みなって。任務の疲れもあるだろうし、うん。そうすべき!それじゃ!」 「あ!」 言い終えるか否かで、リサは疾風のように去って行ってしまった。 「……危険物押しつけただけじゃない!」 「まあまあ」 わなわなと肩を震わすディーナをリイラがなだめる。 返しそびれた小さな機械が手のなかで小さく光っている。 「どうするんだ?この爆弾」 通信機をつまみ上げながら、特に動じた様子もなくディルが聞く。 「機能的にはむしろ必要ですし、持って行ってもいいと思いますよ」 「うーん。街中で突然爆発したら洒落になんないわよ……」 緊迫した国境地点で爆発事件なんて起こしたら……考えただけでぞっとする。最悪の場合国境紛争にまで発展してしまうかもしれない。 「リサを信じましょ。爆発するって決まったわけじゃないですし」 「……そうだね」 しぶしぶだが、この通信機は預かっておくことにする。背負うリスクの方が大きい気がしないでもないが。 「さて、残りの準備は私がしておきます。なので二人は先に休んでください。リサの言うとおり、任務の疲れも残っているでしょうし」 「そうだね。そうさせてもらおっか」 リサとのやり取りでなんだか急に疲れてしまった気がする。ここはリイラの言葉に甘えて部屋で休むことにする。視線でディルをうかがうと、彼も同意のようだ。まあもともとそれを望んでいたのであったが。 「ありがとう」 リイラに礼を告げ、ディーナは医務室を出る。それより少し早く、無言でディルが部屋を出た。 [*前へ][次へ#] [戻る] |