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森の古城と仲間たち9

「あー!こんなとこにいた!」

勢いよく放たれた第一声とともに、深紅の瞳がこちらを見つめる。

「リサ。どうしたの?」

「どうしたのじゃないわよ。探したんだからねー」

軽く頬を膨らませ、ずかずかと医務室へと入りこむ。三人の丁度真ん中の位置に立つと、リサは得意げに声を荒らげる。

「三人とも明日から任務なんでしょ?だったら、私の発明を生かさなきゃってね!」

意気揚々と言い放ったと思いきや、きょとんと事態を見つめる三人をよそになにやらごそごそと白衣のポケットを漁りだす。何なんだと唖然とする間に、リサはそこから何かを取り出す。

「じゃーん!」

「……何?これ」

リサの手の中にあるそれは、小型の機械のようだった。起動ボタンであろう大きなスイッチと、右上から伸びるアンテナのようなものが特徴的であった。
見慣れぬ謎の物体に視線が集まる。興味深げなその様子にリサは満足したようで、高い声のトーンをさらに高めて話し出す。

「あたしが作った通信機よ!まだ試作段階だけど、絶対役に立つに違いないから持って行って!」

「リサの発明品……?」

とたんに、好奇心を帯びた瞳は一転。不安を前面に押し出したものへと変わる。つぶやかれたその声からも、それが明白な不安要素と感じられたことが分かる。

「大丈夫よ!爆発なんてしないから!」

明らかに不安がられている。それを分かっているのか否か。リサはその安全性を訴える。だがそれは、逆に不安をあおるだけだった。

「……本当に大丈夫なの?」

「だいじょーぶ!」

ちゃんと三人分あるのよ、とリサはポケットから次々と同形の機械を取り出しては手早く配っていく。
それを見つめるディルの瞳からは明らかな疑心がうかがえ、リイラも同様なようだ。その様子に若干の不満を感じたようだが、特に触れることなくリサは続ける。

「使い方はね。適当に通信したい機械の番号を選択して、通話ボタン――この真ん中んのでっかいやつね、を押して、後は通話口に向けて話せばおっけー!ね。簡単でしょ!?」

ディーナは試しに説明通りの手順に従ってみる。すると隣にいるリイラの手元からノイズにのせて音声が聞こえる。一応は正確に動作するようだ。一安心。

「ほら、ちゃんと動くでしょ?通信できる距離は半径1キロ。それ以上はできないから気をつけてね。まあ、十分だとは思うけど」

「通信機があれば便利ですよね。安全性は置いておくとして、持っていて損はないと思います。ありがとうございます」

「まーねー」

どうだ、と言わんばかりの表情で胸を張るリサ。

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