森の古城と仲間たち6
「また任務かぁ……。今度のは大変そうだね」
「敵国視察なんざ面倒な仕事押しつけやがって……。しかも三人で。単独で仕事した方がよっぽど楽だ」
「ま、仕方ないよ。適所適材。きっとレオさんに考えがあって私たちにこの任務を当てたんだろうから、精一杯やるしかないよ」
「……」
気だるそうに息を吐くとディルは階段へと続く廊下を歩きだす。
「あ、ディル。リイラのとこに顔出しに行かない?明日から一緒なわけだし、準備品の分担も相談しておいた方がいいと思うの」
「俺はいい。お前ひとりで行け」
「駄目だよ」
こちらを振り返ることもせず、そっけないディルの様子にディーナは頬を膨らます。そして、進もうとするディルの腕をつかむと無理やり目を合わさせる。
「あなたも一緒に来なきゃ、意味ないじゃない。任務に一番大事なのは互いの信頼関係だよ。最初からちゃんと意思伝達ができてなきゃ」
「……うざい」
「うざくて結構。さ、行こう」
心底嫌そうな表情で威圧感を放つディルの腕をそのまま引いて歩きだす。普通の人間であれば引き下がるのだろうがここは経験がものをいう。数年一緒にいるからこそ、ディーナは物怖じすることなく彼と接することができるのだ。
がっしりと腕を掴まれたディルは鬱陶しそうに目を細めはするものの、特に抵抗することもなくそのままディーナに引かれて歩く。
数階分階段を下り、各人の個室があるフロアへと到着する。城の内部は広く、メンバー全員分の私室も完備されている。各々はそこで日々を過ごしながらハンターとしての仕事をこなしていくのである。
ディーナは廊下に並ぶ扉の中から、目的の部屋であるリイラの私室を見つけ出す。
「リイラー、いる?」
コンコンと数回ノックをするも、塗装された木目の扉からは返事がない。
「んー、いないのか。どこにいったんだろう?」
どうやらリイラは留守のようだ。何処にいるのか、ディーナは疑問の目をディルへと向ける。
「俺に聞くな。居ないんならもういいだろ。離せ」
掴まれていた腕を振り払うと、ディーナはあっさりとその手を離す。拘束感から解放され、少し肩が軽くなる。部屋にいないのだからもうわざわざ探す必要もないだろう。手がかりもないし時間の無駄だ。ディルはそう思っておるのだが、ディーナはまだ諦めていないらしい。彼女が何処へ行ったのか、心当たりを思案している。
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