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森の古城と仲間たち5


「さて、」

ぱん、と手のひらを合わせてレオは話を切り換える。

「この件は一回忘れて。二人とも。帰ってきたばかりなのに申し訳ないんだが、また明日からすぐに新しい任務に行って欲しい」

「はい。分かりました」

「……分かった」

任務が立て続けに入ることは少なくはない。ディーナは二つ返事で了承するが、その一方でディルは不服そうだ。

「助かるよ」

「で、内容は?」

「簡単にいえば、敵国視察」

「え!?」

予想外の単語の出現にディーナは目を見開く。

「軍からの依頼。敵国であり隣国のベルザークの様子を探ってきてほしいんだそうな」

「視察って……」

連続で入る仕事にしては事が重大すぎる気がする。嫌な汗が頬を伝うのを感じて、断ればよかったかなと後悔する。

「敵国を調べてどうするんだ?戦争でも始める気か」

「どうだろうねぇ。軍人さんの考えはわからないさ。でも今の権力者さんは和平派みたいだから大丈夫だとは思うよ。それと、そんなに大きく構えなくていいよ。視察といっても国境の町までちょろっと行って様子を見てくるだけだから。簡単だよ」

「簡単……ですか」


平和が保たれているものの二国間の情勢は不安定で、国境越えは容易ではない。そう簡単に事が運んでくれるのだろうか。不安だ。

「ハンターは中立だからね。敵国に行っても問題はないし、たとえこちらが失敗しても軍は無関係を装えばいいから、軍にとっては都合が良いんだろうね。まったく、こっちも大変なんだけどなぁ」

そうぼやきながらレオは何やら手元の紙を寄せ集め始める。意味なく散らばっているように見えたが、きちんと順になっていたようで軽くそろえるだけで資料が完成する。

「はい、これが今回の任務の資料。詳しいことはこれに書いてあるからちゃんと読んでね」

手渡された資料には任務の概要、手順が細かく記されている。一見ただの駄目人間だが、こういう手の行き届いた仕事ぶりは流石のものである。ゆえに、数多くの人間が彼を慕いついてきているのだ。

「ザルカンタ国境の情報屋に連絡はしてあるから、彼に手引きしてもらうと良い。あと、今回は君たち二人に加えてリイラも一緒ね。簡単とは言っても繊細なとこはあるから、彼女の力は必要になると思うよ」

「はい。わかりました」

「出発は明日の朝だから、準備はばっちりにね。じゃ、気をつけてな」


笑顔で手を振るレオに一礼すると、二人は再び本の隙間を通って退室する。


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