森の古城と仲間たち4
「ただいま帰りました。それにしても部屋、掃除しないんですか?」
「まぁ、なかなかね。使うものは近くにあった方が効率良いじゃない」
「……そうですか」
口元から判断してにこにこと笑っている様子のレオは、何一つ気にしてはいないようだ。この部屋を汚いと思っているのかすら不明だ。ときおり彼についていって本当に大丈夫なのか不安になる。
「で、俺たちを呼んだんだ。何か用があるんだろう?任務についての報告か?」
「うん。そうだよ。まずは任務お疲れ様。ホドリ村の件だが、何か気になるようなことはあったかい?」
「はい」
ディーナはレオに今回のホドリ村での事件の出来事を話す。再生、増殖する猛獣。不可解な謎、赤い塊、拾った不思議な欠片。
ただの討伐任務と思っていたのだが、謎が多く不明瞭だ。もしかすると事件の全体すら分かりかねているのかもしれない。
「これがその欠片です。敵を倒した際に落としたのですけど……」
「どれどれ?」
ディーナが差し出した破片を受け取ると、興味深げにそれを見つめるレオ。しばし考えるようにして、おもむろに口を開く。
「これ、コアだよ」
「コア?」
聞き慣れない用語に首を傾ける。
「コアってのはね、この世界にある物質全てにある存在の核のことだよ。これが壊されない限りその物質は存在を保つことができる」
「存在の、核?」
言っていることの意味が分からずディルは眉根を寄せる。
「そんな難しく考えなくていいよ。例えば、ガラスは割れてもガラスだろう?こんなふうに、たとえ粉々に破壊されてもその存在の性質自体は変わらないってこと。コアが破壊されたら、その存在も破壊されてしまうんだけどね」
「なるほど。しらなかった」
自分の知らない世界の構造があったとは。ディーナは感心しつつ驚きを隠せない。
「普通は知らないよ。知ってたとこで日常に関係はないし。それで、このコアには強弱があって、コアが弱いとその存在はすぐに朽ちてしまうし、強ければ簡単に壊れてしまうことはない。でもね、一つ問題。コアは無機物にしか存在しないんだ」
「え、それって……」
「そう。だから今回のように生き物がコアを持つってことは理論上不可能なことなんだよ」
「だが、この欠片は確かに猛獣から発生したものだ。どういうことだ?」
「うん。それは事実だ。おそらく赤い塊もコアのことだろう。事実として起こってしまったなら、それは真摯として受け入れるしかない。コアを持つ生物が誕生した。そういうことだろうね」
「……」
自分たちが関わった事件が世界の構造に反する事実を発見することにつながるとは。そんなこと考えてもいなかった。予想以上に事態は深刻なのかもしれない。
「この欠片は預かるね。調べさせてもらう。リサを呼ばなくちゃなぁ」
レオはうけとったコアの欠片を小瓶に入れてしまいこむ。
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