終息、そして10
東の空に朝日が滲む。親玉の消失とともに他の猛獣たちも消え、村は落ち着きをとりもどしつつあった。怪我人や建築物への損害も少なくはないが、再び上ってきた太陽が平穏の再来を暗示しているようだった。
「ベルト君、ありがとうね。キミのおかげで親玉を倒すことができたよ」
「いや、そんなことないよ。二人のおかげだよ。それに、何度も助けてもらっちゃったし……」
頬を掻きながら、ベルトはディルへと視線を向ける。なんだかんだ言いながら、結局自分のことを助けてくれた。嫌な奴だと思っていたことに少しだけ罪悪感を覚えたのだ。
「なんだ」
視線を感じたのか、ディルは相変わらずの不機嫌な顔でベルトを睨む。
この高圧的な態度にも幾分慣れたようで、ベルトは笑顔で告げる。
「助けてくれてありがとう」
「別に助けたわけじゃない。お前が勝手に生き残ったんだろうが」
そう言うとそっぽを向いて歩きだしてしまう。
なんというか、素直じゃないとでもいうのか。まあ、悪い人ではないことは確かだ。ベルトは気付かれないように小さく笑った。
「ハンター殿や」
しゃがれた声に振り向くと、白いひげに白い眉、杖をついた老人の姿があった。
「村長さん。ご無事だったんですね、よかった」
額に包帯を巻いてはいるもののその姿は元気そうなものだった。ディーナは安堵する。
「ありがとう。ハンター殿たちがいらっしゃらなければこの村は壊滅しておりました。何とお礼を言ったらよいのか」
「いえ。対応が遅くなってしまって、本当に申し訳ありません。犠牲になった方も、救うことができなくて……」
「いいんじゃよ。仕方のうことじゃった。これだけのものがまだ生きておる。今はそれだけで十分じゃ」
「……ありがとうございます」
うつむくディーナに、気にするなと強く笑う村長。救えなかった命の重さをかみしめながら、その言葉に少しばかり救われた気がした。
「我々こそ、ハンター殿に全てお任せしてしまって申し訳ない。本当に、感謝いたしますぞ。ああ、それとベルトや。マーダさんが探しておったぞ」
「母さんが!?やばっ、ありがとうございます、村長」
制するマーダを押し切って飛び出してしまったことを忘れていた。焦ってベルトはマーダのもとへと向かった。
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