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終息、そして9
眩しいほどの輝きは、ダメージを与えつつ親玉の視界を白光で埋めつくす。視界を奪われた親玉は我武者羅に暴れだす。不規則に振り回される腕の強襲を掻い潜り、ディーナは大きく跳躍する。そしてその脳天めがけ何発もの弾丸を撃ち込む。

「グゥアアアアアアァァァ……」

いくら再生をしようとも、脳天からの攻撃はひとたまりもないようである。思考に携わる器官を破壊され、その動きは一気に鈍る。

猛攻が止む。その間にディルは神経を一気に集中させる。発せられる独特の『気配』を糸を手繰るように探していく。そして、見つけ出す。

再生を完了し、再び敵は動きだす。
咆哮とともに襲いくる攻撃。強大な手足を利用した激しい殴打。たび重なるダメージに親玉の怒りは最高潮なようで、一撃でも喰らってしまえば全身を砕かれ絶命しかねない。

その中を、ディルは臆することなく突き進む。彼の標的はただ一つ。
狂気の拳が頬をかすめる。切れた皮膚から赤い雫が滴り落ちるのにもお構いなしに、ディルは自身の右手に風を集結させ、限界まで研ぎ澄ます。生み出された風は全てを切り裂く剣となって顕現し、そして親玉の喉元から左房にかけて一気に斬り裂いた。

「ギャアアアアアアアアアア!!」

血しぶきを上げ、親玉はたまらず悲鳴の咆哮を上げる。ばっくりと開いた傷口に、血の色、否、それよりも赤い紅蓮の結晶がむき出しとなった。

紅蓮が輝きを放ち、開かれた左房を再生が始まる。新たに生み出された皮膚が傷を塞ぐよりも速く、光速の弾丸が突きけた。

煙を上げる銃口を向けたまま、ディーナが着地する。
その瞬間、閃光が完全に貫通した赤い結晶は一気にひび割れ、砕けていった。それに呼応するように、親玉の大きな体は急速に朽ち果て、灰のように崩れて消えてしまった。

「……やった………!」

敵は完全に消失した。勝利したのだ。ベルトは安堵と喜びに奮え、吐息をもらした。緊張から解放され、身体の力が一気に抜けてゆくのを感じた。

「標的消滅、任務達成だね」

銃をしまうと、ディーナは微笑む。

「……ああ」
 
そうとだけ応えて、ディルは頬の血を袖で拭った。


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あきゅろす。
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