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移ろいゆく日常13


ホドリ村の入り口にて、三人は合流する。
橙色の斜陽が長い影を作り出す。村の人影はまばらになり、それぞれの自宅にて夕飯の支度へと戻っていったようだ。

「村の人たちにいろいろ聞いてみたんだけど、化け物の姿を見たって人の話は食い違ってる点が多くて、やっぱり何個か種類があるみたい。それと被害の様子なんだけど、はじめのうちは農作物が荒らされるだけで、そこから家畜が殺され、人が襲われて……といった感じに次第に被害が拡大していったようね。でも生き物に被害が出るようになってからは作物の被害がなくなったらしいわ。どういうことなんだろう」

村人から集めた情報をまとめ終えて、ディーナは小首をかしげる。

「森の様子は何も異変はなかった。化け物の気配がないどころか、昨日倒した奴の残骸すらも残ってない。消えていた。忽然と」

「消えてたって……。そんな、あんなに大きいのが!?嘘だ……」

「嘘じゃない。奴との戦闘で残ってあるはずの跡すらもなかった」

「ますますわけが分かんなくなってきたね……。どうしたらいいんだろ」

それぞれの報告に謎は深まるばかり。
情報が錯綜するなかでは具体的な解決策さえ見出せない。

「とりあえず、まだぜんぜん安心できる状況じゃないってことだけは確かなんだよね」

先の見えぬ状態に憂愁の色を見せるベルト。猛獣の恐ろしさを身をもって味わった立場としては、これ以上の被害を出す前に事態が収拾することを切に願うだけであった。

「拾った欠片との関連も分からなかったし、依然として様子見だな」

「そうだね。村への警戒をしつつ、今日はいったん戻ろうか。これからどうするか考えなきゃ」

「うん。それじゃあ、夜になる前に家にもどろう。暗い森は危険だし、化け物がいないとしても森の中にはもともといる獰猛な動物の動きも活発になるからね。そんな奴に出会ったら嫌だし」

元来森の中には熊やオオカミなどの肉食獣が住んでいるのだ。そういった動物は猟師が討伐してくれるので村での生活には支障はないのだが村の外では安全は保障できないのだ。化け物相手に互角以上の戦いができるハンターたちと一緒に行動するのだから、いまさらそんな動物への心配など杞憂でしかないのだろうが。


村に化け物が現れた時は『気配』でわかるらしい。ベルトにしたらよくわからないことだが、村から離れることについては心配しなくても良いようだ。

夕方以降は動物や不審者の侵入を防ぐため村の入り口の門が閉まる。木製の簡単な門ではあるが村を守るには十分な効果があるという。
閉まりかけたその門をくぐりぬけると我が家への帰路をたどり始めた。


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