解き明かす、光10
「……おまえと同じように、身体の一部を変化させて戦う軍人に会ったことがある」
「なるほど、タグと会ったんだ。そういえば、ここにくる前は北方にいたんだっけか」
ディルは無言でうなずいた。タグの名前がすぐに浮かんだ、ということはこの力は限定的なものなのだろう。
「肉体の構造分子を組み替えて異なる物に変質させる力。これは、タグの一族にのみ伝わる珍しい能力でね。前に研究させてもらった際に自分用に改良してみたんだ
。これがなかなか便利でさ。身体能力も向上するし、何かと使わせてもらってるんだ。まあ、オリジナルよりは力は落ちるし、適応リスクもあるから普及はさせなかったんだけどね」
やはり、タグの力と関係していたのか。ジオがあれだけの力を持っていたことも腑に落ちる。ただの研究員でこうだとすると、もし一般の軍人たちに普及していたら……可能性を考えると、恐ろしくなる。
「話を戻すけどいい?」
ジオは再びコアへと視線を戻す。それに倣って、ディルもコアを注意深く見つめた。
静かに息を吸って、ジオは尖らせた指先を発光するコアへと突き刺した。
すると、穿たれた中心から蜘蛛の糸のようなひびがゆるやかに広がり、全体に達し、そして。
パアン――、小さな音をたてて光の塊ははじけてしまった。
それだけでは終わらない。
その後を追うように再生したはずの石に異変が現れる。波打つ水面のようにゆらいだかと思えば、軋んだ音とともにひび割れ、コアと同じように砕けてしまった。粉々になっ破片は形を失い。燃え尽きた命が灰に還るように、さあっと、霧散して消え去っていった。
「コアが破壊されれば、当然それを要としていた物質は消える。こんなふうに、跡形も残らずね」
ジオは先程まで石だったはずの灰を指先で撫でた。確かにここにあったはずの存在はもう見る影もない。
似たような光景を思い出した。コアを破壊された有核生物も、確か同じように灰となって消えていったのだった。
「これは特殊な例だけどね。普通ならコアはこんなに簡単には壊せない。多少の損壊なら、修復機能が上回る。コアに干渉しうる力なんてものは、この世界にそうそう存在しない。そうでなければ、コアで出来たこの世界なんて今頃すべて塵と化しているだろうからね」
「だとしたら、お前はどうしてコアを壊せるんだよ」
「秘密。長年の研究の賜とでも思ってくれればいいさ。条件さえ整えば、コアに干渉することは不可能なことではないんだ。実際、君たちだって生物のコアを君たちは破壊してきたんでしょう」
確かにそうだ。コアはけして破壊できない物ではない。今までの経験がジオの言葉の一番の裏付けとなる。
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