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解き明かす、光9

「普通のコアにここまでの力はない。けれど、こうして干渉することで、存在維持の力は驚異的な再生能力に性質を変える。まさに、君の再生能力の正体がこれだ」

 ディルは自分の掌をみつめた。自身に宿る力を目の当たりにするのは奇妙な感覚だった。

「今僕がやったように、物質に宿るコアを光の塊として抽出する事自体はできる。おそらく、抽出したコアを肉体に結びつけることで生命がコアをもつ事を可能にしているのだと思う。この方法ならば、僕だって思いつくからね」

「なら、お前も有核生命を作れるのか?」

「……残念だけどそれは不可能だ。理論を組み立てることはできても、実証することはは出来なかった」

 ジオは不服そうに顔をしかめて、ぐしゃぐしゃと頭を掻いた。

「さっきも言ったでしょう。コアは物質にしか宿らない。君のように命ある存在に宿ることは本来あり得ないことなんだ。生命は有限。性質を変えながら終わりに向かって歩き続ける存在だ。存在を維持しようとするコアの力とは相反するものだ。仮にこの力が人間に宿れば、それは永遠の命と呼べる代物になる。それを実現させようと、多くの研究者たちは躍起になったものだよ。もちろん僕だってそうだ。何千、何万の試行を繰り返した。でも、誰一人としてその領域に到達することはできなかった」

 それなのに。
 ジオの視線を感じる。

「ネオは君という存在を造りだした。奴は人間が越えることのできなかった一線を越え、命すら生み出した。それは恐るべき事なんだよ。世界の仕組みそのものを動かす、まさに神様にしかできない所行さ」

 神――。ネオは神を殺すと言っていた。神への復讐を果たすために、神に等しい力を得る。なんと皮肉なことだろうか。

「あの男は、俺を生命体とコアの適合実験の最初の成功例だと言った。他に存在する有核生命は、すべて俺をベースにしていると」

「へえ、つまり君を分析すればコアと生命体を紐付ける方程式を解明できるということか。やはり解剖しがいがある」

 本当に興味深いなあ、ジオはにやりとする。
 背筋を凍らす寒気にディルが身をすくめると、冗談だよ。と軽く笑う。だがそれこそ信用できない。隠しきれない好奇にぎらぎらと光るその瞳が、けして冗談などではないことを物語っている。
 
「そうだ。コアの性質として、もう一つ君に伝えておくべきことがある」

「なんだ?」

「じゃあ問題。コアの性質は物質の存在維持。では、コアが失われたときその物質がどうなるか分かるかい」

「……、壊れる?」

「そう、その通り」

 ジオは淡く光を放つコアへと向き直る。何をするのかと見ていれば、指先を錐のように細く鋭く変化させる。

「――おまえのその力、軍の特殊技術か何かか?」

 先ほど浮かんだ疑問を投げかける。ジオはきょとんとして、それから首を横に振った。

「いいや。違うよ。どうしてそんな疑問が出てくるんだ?」


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あきゅろす。
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