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解き明かす、光8




 研究室の奥、厳重に施錠されたを開くと一回り小さい部屋が広がっていた。手前の部屋が研究室と居住空間を兼ねているのに対して、こちらは保管庫といった様相だ。暗くひんやりとした空気。強化ガラスのケースに囲われた棚の中に、薬品漬けになった生物の標本や、得体の知れない薬液、見たことのない鉱石がならんでいた。
 ジオは鍵のかかった引き出しを開けると、そこからより厳重に鍵のかかった箱を取り出して中央に位置する机の上に置いた。箱の中から出てきたのは、小さな石のかけらだった。

「これ、何か解る?」

「石、のようにみえるが」

 白色電球の光を受けて艶やかな光沢を放っているが、それは何の変哲もない石のようにみえた。

「そう、何の変哲もない石ころさ。だけど、この石は俺たち人間が持ち得ない核を有している。物質がその性質を維持し存在を保ち続けるための要、俺たちはコアと呼んでいる」

「コア……この世界にあるすべての物質に宿る、のだったか」

「そう。この世界の物質すべてにコアが存在する。小さな鉱石から強大な建築物、はたまたそれらが立つこの大地のはてまで、ね。コアの基本的な性質は『物質の存在を保つこと』。コアがある限り、その物質が完全に世界から消え去ることはない。見ていて」

 ジオは引出しからハンマーを取り出すと、机の上に置いた石めがけて思い切りたたきつけた。その衝撃で、石は粉々に砕けて割れる。

「砕けた石を見てごらん。粉々になり、形が変わってこそ居るがこの物質の性質自体はなにも変わらない。砕かれる前と同じ石だ。それが、核をもつということ。核が壊されない限り存在は変わらない。けれど、コアの力の真価は別のところにある」

 ジオは砕けた石に手をかざす。
 すると、石の周囲からぼんやりと赤い光が放たれる。膜のようにかけらを覆う薄いもや状の淡い光。それはゆっくりと、溶け出すように欠片から放出され、小さな球体を形成する。

「これがコア。コアは実体を持たない不可視のエネルギー体だ。けれど、すこし手を加えるとこうして目に見える光の塊として確認することができる。そしてさらに……」

 砕かれた石のかけらがふるふると震えだした。と、おもえば、ふわり、粉々に砕けたかけらが宙へと浮かび上がる。それは再びもともとの石が合った所へと収束し、再びひとつの小さな石にもどっていく。

「……!」

 ディルは目を開いてその様子を見ていた。
 修復したかけらは元通り、つなぎ合わせた跡すらも存在しない。最初にディルがみた、小さなかけらの状態となんら変わりがなかった。

「驚いたでしょう? コアのもつ力を増幅させたんだ。そうすると、物質が形を保とうとする力が強まる。そうして、こんな風に元の形に修復するというわけだ」

 その様子はある光景を思い起こさせた。
 これまで見てきたコアを持つ獣たち、そして自分自身の傷の再生する様子とあまりにも似ていた。


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あきゅろす。
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