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解き明かす、光7

 風は激しく渦を巻き、嵐となってすべてをかき乱す。
 ディルの意志を越えて、荒れ狂う獣は牙をむく。あらゆるもの食い尽くして、呑み込んで、そしてその牙はジオへと。

「逃げ――」

「ふうん。よくわかったよ」

 迫りくる嵐をジオの腕が横薙ぎに払う。
 すると、荒れ狂う風は相反する力で打ち消され、はじけるように消えた。

「な……」

 その光景にディルは思わず目を見開く。
 ジオは至って落ち着いた、平然とした様子で書き消えた風の余波に髪を揺らしていた。

「君の力はだいたいわかったよ。ああ、部屋がぐちゃぐちゃだ。片づけは君がやってよね」

 暴走しかけた力を、ジオが相殺したのだ。制御しようとしていたとはいえ、けして小さな驚異ではない。それを息一つ乱さずに、こんなにも容易く打ち消してしまうなんて。それも訓練を詰んだ軍人ではなく、こんな細身の科学者が。
 先ほどの衝撃によって裂かれたのだろう、白衣の袖が破れて今まで隠れていたジオの手元が露わになる。必要最低限の筋肉しかついていない細い手首のその先、本来ならば手のひらがあるはずのその部位があるべき姿と様相を異にしていた。肌色の皮膚が手先へ向かうにつれ研いだ鉄の滑らかな色へと変わり、鋭く尖ったその形は見紛うことなき刃。人間の腕が、そのまま刃へと変質しているのだ。
 その能力には見覚えがあった。北方で出会った軍人――タグの持っていた力だ。

 記憶を辿るディルの頬にぬるりとした感触が伝う。何かと思って触れてみると、指先が赤く濡れた。血だ。ジオの刃をかすめたのだろう。小さな傷が、じくじくと痛んだ。
 この痛みもすぐに消えてなくなるはず、そう思っていたが、しばらくしても小さく波打つような痛みは引かぬままだった。真新しい傷口からじわりと染み出る血液も、治まる様子がない。

「どうして傷が再生しない? って、思ってるでしょ」

 心の声を代弁したのはジオの声だった。彼は少しだけ上機嫌に広角を歪ませて、いたずらを成功した子供のような、笑いたくてたまらないといった顔をしていた。

「コアの力は確かに強い、けれど、無敵ではないんだよ」

 長い髪を揺らして、ジオは部屋の奥へと進む。

「ついてきて。教えてあげる、君のこと」


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あきゅろす。
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