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解き明かす、光6

 ジオは再び鋏を投げつけてくる。ひとつ、ふたつ。それを避ける。意識をそちらに意識を集中させた隙に、先ほどのように攻撃を仕掛けてくるつもりか。
 予想通り、ジオは再びこちらへと接近してくる。しかし違ったのは、それからの行動だ。握っていたはずの刃はなく、その代わりに堅く握りしめられた拳が振り上げられている。
 避けることはせず、受け止める。しかし予想以上に重く、堅い一撃だ。
 この身体のどこにそんな力があるというのだ。衝撃で身体が後ろへと反れ、身体がよろめく。体勢を立て直そうとした脚を払われ、そのまま倒れ込む。
 起きあがろうとしたところに、ジオが馬乗りになってその動きを封じる。

「打撃のダメージは普通に受けるんだね。それならこれは?」

 ディルの身体に跨がったジオ、その手にはいつの間にかハンマーが握りしめられていた。そして彼は何の躊躇いもなく、押さえつけた右腕に向かって振り下ろす。

「……っぅ!?」

 ゴキリ。鈍い音がはっきりと聞こえた。。
 びくりと身体が跳ね、のたうち回りたくなるその痛みが全身を走り抜ける。しかしその激しさも一瞬。あとは波が引くように、ゆるやかに元へと戻っていく。

「ふむ。外傷よりも内側の傷の方が再生が遅いのか。傷の深度によって時間が変わるのは人間と同じなんだね。では、腕を完全に切り落としたときは、より生成に時間がかかるということか。……試してもいいかな?」

「いいわけ……ねえだろ!」

 ディルは身をよじってジオを払いのけると、反撃とばかりに拳を振るう。

「おっと」
 
 それもむなしく、軽々と身を翻したジオにかわされてしまう。
 ここまで一方的にやられるものだろうか。本来の力が出せないとはいえ、ここまで圧倒的な戦力差がある相手とも思えない。

「兵器というのが聞いてあきれる。僕は何の戦闘訓練も受けていない一般人、しかも引きこもりの科学者だよ? そんなものをあいてに、無様すぎない? もっと殺すつもり出来てくれないと。君の力を測れないだろう」

 あからさまな挑発だ。だが、いいだろう。乗ってやる。
 先ほどからあまりにも一方的な展開が続いて、鬱憤も貯まっている。もう我慢の限界だ。

「うるせえよ」

 ならばみせてやる。
 解放する。風の力、すべてを飲み込む破壊の力。
 大丈夫だ、制御できる。意識を集中させ、ジオをなぎ払う風を巻き起こす。

「!」

 発現した強大な力に、ジオの身体は呆気なく飛ばされ、壁へと叩きつけられる。

「いてて……、なるほど。これが本来の力か」

 追突の衝撃で壁の本棚が倒れ、大量の本が散乱する。崩れたその山からようやっと這い出て、ジオは痛めた腰をさする。

「くそ……」

 力はうまく発動した。だが、ディルの表情は険しい。
 獰猛な獣が枷を引きちぎろうと暴れ出す。静まれ。そう命じているはずなのに、沸き上がる力がどんどん増幅し、あふれ出そうとする。うまく制御が出来ない。自分の力のはずなのに、自分のものでないように感じる。


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