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エスケイプ アンド ハイド13

 この得体の知れない男を信用して軍に身を預けろと言うのか。そんなことが出来るはずがない。そのうえ、軍の研究者は有核生命の実験にも通じている可能性が高い。ネオとの繋がりがないとは言い切れない。

「君に拒否権があると思っているの? 此度の災禍の元凶としてハンターを疑う声もある。僕が申告すれば、君の存在はすぐに明るみになる。そうなれば、君は間違いなく罪を問われることになるだろう。そうなれば君とつながっているハンターも言い逃れはできない。まとめて反逆罪で刑に処されることになるだろうね」

「っ――」

 脅し同然の言葉。だが、それが間違いなく起こり得る現実であることが解らないほど愚かではない。

「心配しないで。君を悪いようにはしないから。他ならぬループ大佐の頼みだ。君を無碍には扱わない。それに、これは最善だ。大佐にだって与えられている任務がある。君を付きっきりで守ることは出来ない。けれど俺たち科学班なら、他の軍人に見つからないように君を匿うことはたやすい。それに君の力を解明して制御できる方法を見つけだしてあげる。その代わりに、君が開示できる情報はすべて明らかにしてもらうけれど」

「つまり、身の安全を保障する代わりに実験体になれということか」

「端的にいえばね。けど、悪い話じゃないよ。君を研究して得た情報はきちんと君へ還元しよう。仕組みを理解することは力を制御するために大いに役立つはずだ。僕が力の使い方を教えてあげる。君は情報を提供して、僕たちは身の安全を保証する。その上、力の制御まで出来るようになるんだ。君の利は大きいんじゃないかな」

「……」

 答えは決まりきっている。相手の要求を飲み込むしか、選択肢は残されていないのだから。
 気にくわないが、これが最善、というのも正しいのだろう。差し出された条件に異論はあるが、それを拒んだところで己の首を絞めるだけだ。他に手段も方法も浮かばない。

「――わかった」

 ディルがうなずくと、ジオは目を細めて、満足げに口元を歪ませた。

「交渉成立、だね。改めてよろしく。ディル」

 白衣の裾からのびた白い腕が差し出される。
 その手を取って、ディルは前髪に隠れた少年の瞳をじっと睨む。
 かすかに見えたその色は、澄んだ黄金の色をしていた。


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