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移ろいゆく日常8
しばらく村をぶらついていると、突然の声に呼び止められた。

「おい。ベルト!」

「あ、ダン」

親しい友人の顔に自然と笑みがこぼれる。

「久しぶりじゃねぇか!最近村に顔出さねえからどうしてんのかとおもったぜ」

「ちょっと母さんの手伝いが忙しくてね。学校が始まったらまた毎日通うよ」

普段ベルトは家から村の学校まで通っている。村のなかに住んでいる他の生徒たちにくらべて大変ではあるが、家が遠いからといって勉強をおろそかにはできない。というか母がそれを許してくれない。
現在は長期休暇の真っただ中であったため、村に来るのは久しぶりだ。こうして友人に会うのも前回学校に行った日以来である。

「薬師ってのも大変だよなぁ。まぁ、マーダさんのおかげでこの村の人たちは元気に暮らせてるんだけどな。本当、ありがたいぜ」

「はは……」

都市から離れたこの村には医者が一人しかいない。一般的に医療で使われている薬は都市の製薬所で造られたものだが、それを仕入れるルートもごくわずかに限られている。そんなこの村の薬の製造を請け負っているのが自分の母、マーダリカだった。
村人の多くは彼女を優しい天使のような存在とみて感謝しているが、その仮面の下の悪魔、いや魔王の顔を知る息子のベルトから見たら何とも複雑で煮え切らないものがあるのであった。

「そういえば最近村に怪しげーな噂が流れてんじゃん?化け物だか怪物だかっていう」

ふと、思い出したかのように友人がその表情に真面目さを纏う。
化け物も怪物も似たようなものだが、というツッコミを心の中にしまってベルトは先日自身もその渦中にあった話題に耳を傾ける。

「それ、やっぱり村で噂になってたんだ……」

どうやら猛獣の噂を知らなかったのは村から離れたリトラシアン家だけのようだ。
少しだけ取り残された寂しさを覚えてしまう。

「ああ。お前、知らなかったのかよ?村中大騒ぎだぜ?まあ、かといって家の中に閉じこもってるような連中じゃないけどな、俺らは!」

確かにそんな噂が流れている中でも村人の生活はいつも通りだ。ダンを含む村の人たちのどこか強気な姿勢はどこから来るのだろうか。わが村ながらたくましすぎる。


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あきゅろす。
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