移ろいゆく日常7
「猛獣ですか……。実は私たち、昨日それらしきものに出会ったんです」
「それは本当ですか!?」
「はい。人を襲っているところに出会い、倒しました」
「なんと……。あの化け物を倒してくれたのですか!!」
村長は驚きを隠せないといった表情をしながらも、猛獣の討伐を聞いて安堵しているようだ。その顔に張り付いていた緊張が和らぐ。
「一応は、ですけどね。まだ分からない点が多くて、安心はできません」
「……そう、ですな」
村を襲う不安はまだ消えてはいない。その恐れを抱いて、村長は再び表情を曇らせる。
そんな老人に「大丈夫です」と、ディーナは気遣いの声をかける。そんなやり取りを横目に傍観しつつ、ディルは無言のまま思考を巡らす。
昨日のあの化け物は明らかに異様な姿をしていた。数体の生物を繋ぎ合わせ、混ぜ合わせたような異形の怪物だった。さらには銃弾が脳を貫通しても死なない、脅威の生命力あるいは回復力。そして残骸の中に残った謎の欠片。残る謎があまりにも多い。
あの場で斃したからといって、容易に事件の解決と考えない方が良いだろう。面倒だが、もう少し様子を見る必要がありそうだ。
「もう少しこの村に滞在して、情報を集めてみます。それで何の問題もなければ事件は解決したと考えられますし」
どうやらディーナの考えも同じらしい。有力な情報が手に入るまで、この村の安全が保障されるまではしばらく様子見、ということだ。
「はい、よろしくお願いします。ハンター殿」
深くまで頭を下げ、不安の色を浮かべる村長。村の安全を取り戻そうと、すがるような思いなのだろう。
「はい。任せてください。きっと、村の平和を取り戻します」
力強く告げると、ディーナは碧の瞳を細めて微笑んだ。
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