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移ろいゆく日常6

村長の家は外見にそぐわしく、年月のたった自然の素材でできた壁や床が古いながらも良い味を醸し出していた。乾燥した藁を編んで作られたのれんをくぐると、小上がりの上でちょこんと座っている老人の姿が目に入った。

「おや、お客さんかね」

老人はしゃがれた声で呟くと、二人へと体を向ける。白く伸びた眉と、蓄えられた同色の口髭が顔を覆い隠すようにしていて、表情は見えない。

「お邪魔します。ホドリ村の村長様ですよね。依頼されてきたのですけど」

礼儀正しくぺこりと一礼してディーナが挨拶する。それに倣ってディルも一礼する。

「おお、ハンターの方かね。遠方はるばる、すまないのう」

「いいえ、こちらこそ訪問が遅くなってしまって申し訳ありません」

「ええのじゃ、そうお気にしなさんな。さて、まあ、こちらにお掛けください」

そう言うと、村長は目の前に用意された御座へ座るように促す。そして、よいしょの小さい掛け声とともに立ち上がるとお茶と湯呑を準備し始める。

小上がりに上がると、ぎし、と床の軋む音がした。割れたりしないだろうか、ディルはその足取りを少しだけ慎重にする。
御座といっても、申し訳程度に床に草を編んだものが敷いてあるだけで座ると床のごつごつした感覚がほぼそのままに伝わってくる。

見回すと、村長である老人以外の人の姿はない。屋敷の広さに反して、住人は小さな老人一人だけのようだ。そんなことを考えていると、淹れたてのお茶が入った湯のみを手にした村長が戻ってくる。二人にそれを差し出すと、御座に座りなおして一口お茶をすする。

「さて、今回おふた方をこの村に呼んだ訳を話させてもらおうかね」

一息ついて、村長は口を開く。
緊張した面持ちで「お願いします」とディーナは改めて村長へと向き直る。

「先日から、この村周辺で奇妙なことが起こっているのですよ」

「奇妙なこと?」

「はい。謎の猛獣が現れたのです。はじめは森の動物たちが襲われたり、畑の作物を荒らしたりといった被害だったのですが、最近では村の人々も襲われはじめて負傷者も出始めました」

猛獣、と聞いてふたりは顔を見合わす。昨日であった猛獣、あれがそうだろうか。

「事の重大さを感じ、軍に討伐を依頼したのですが、このような奥地の小さな村には手が届かないといわれてしまいまして。それで噂を聞いたあなた方に依頼をした次第ですのじゃ」

言い終わると村長は再びお茶をすする。


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あきゅろす。
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